またしても自民党と教団の関わりの深さが明らかになった。

 実態解明にはさらに踏み込んだ調査が不可欠だ。本気で問題を解決する意志があるか、岸田文雄首相の覚悟が問われる。

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体が国政選挙の際に、自民の国会議員に教団側が掲げる政策を推進するよう「推薦確認書」を示し、署名を求めていたことが判明した。

 数十人規模に要求したとみられ、教団側は団体が組織的に行っていることを認めた。

 推薦確認書には、憲法改正や安全保障体制の強化、同性婚合法化への慎重な対応などの項目が並び、自民の政策と共通点が多い。

 署名したことを認めた斎藤洋明衆院議員(新潟3区)は「政策協定的な側面もあると理解していた」と話した。事実上の政策協定に位置付けられるものだろう。

 一般的に議員は、選挙で支援を受ける代わりに、当選すれば団体が求める政策の実現に尽力する。

 しかし、教団に霊感商法などの問題があるとは知らずに接点を持ったという議員も多かった。

 言動が社会問題化する団体の意向を受けて政策がゆがめられることがあったとすれば、問題だ。

 推薦確認書を巡って、岸田首相は国会で「党の政策に影響があったとは思わない」と答弁した。検証をせずになぜそう言えるのか。

 首相はこの問題が、「党の(教団との関係を巡る調査)取りまとめの中にどのように反映されているのかがポイントであり、当該議員は説明責任を果たさねばならない」とも主張した。

 これまでに公表された取りまとめは、会合出席や選挙支援といった表面的な接点にとどまる。

 疑念を晴らすには、議員任せではなく党として調査を徹底し、実態を明らかにするべきだ。

 教団問題を巡り、首相の国会答弁が迷走したことも懸念材料だ。

 宗教法人の解散命令の請求要件についての見解を、首相はわずか1日で変えた。国会答弁の内容を翌日に転換するのは異例だ。

 首相は、請求が認められる法令違反の要件に該当するのは刑法違反などで、民法の不法行為は「入らない」と言及したが、翌日には「含まれる」と答弁した。

 旧統一教会に、刑事事件で確定した組織的犯罪はない。

 首相の転換は、野党から刑法違反は確定判決までに時間がかかると批判されたことが大きい。

 官邸筋は「民法が含まれるかどうか、どっちでも良かった」と明かしたが、解決への本気度を疑う。もっと検討を深めるべきだ。

 自民、立憲民主などの与野党4党は21日、被害者救済の法整備を議論する協議会の初会合を開き、今国会中の法案成立を目指す方針を確認した。議論を急ぎ、救済の道を確実に開いてもらいたい。