2期目の政令市運営を託された。1期目の経験を生かし、停滞を脱して県都・新潟市を活性化させる具体策を早く示さねばならない。果たすべき責任は重い。
23日に投開票された新潟市長選で、現職の中原八一氏が新人との一騎打ちを制して、再選を果たした。
当選後、中原氏は「リニューアルされる新潟駅をはじめ、駅周辺整備が着実に進んでいる。この機会を逃さず、活力ある拠点都市をつくる」などと抱負を述べた。
それには、公約に掲げた「選ばれる都市」を実現する具体的な手段や道筋が欠かせない。
施策を総花的に展開するばかりではなく、中原カラーを強く発信する姿勢が求められる。
最大の課題であり、難問なのは人口減少だ。市では死亡が出生を上回る自然減と、転出が転入を上回る社会減が同時に進む。
政令市となった2007年に81万人だった人口は78万人を割った。特に20代前半の社会減の人数は全国20の政令市で最も多い。
県下最大都市の魅力が欠けているのではないか。専門学校や大学を卒業後、就職で首都圏などに向かう若者をとどめる「人口ダム」としての機能回復が急がれる。
中原氏は選挙戦で産業振興、子育て支援、福祉政策など「あらゆる政策を総動員し、活力ある新潟をつくる」と訴えたが、当然だ。
拠点性や求心力を高めることも県外から人を引き寄せ、人口流出防止の手だてとなる。
中原市政の目玉施策「にいがた2km(にきろ)」は、新潟駅から古町地区までの都心エリアを再整備し、活性化させるものだ。
老朽化ビルの更新、IT系企業などの誘致を進めるとするが、具体的な将来像がまだ見えない。
活性化した都心で生まれた活力を八つの行政区全体に波及させるという道筋も不透明だ。
政令市移行から15年たち、財政状況が厳しさを増す中、8区の態勢を維持するのかどうか、議論は避けて通れない。住民目線で最善策を探ってもらいたい。
投票率は、新人4人の激戦となった前回選を大幅に下回った。
中原氏は「投票率という見えない敵がいる」と訴え、陣営は「信任投票」と位置づけた。7割に迫る有権者が投票しなかったことを謙虚に受け止めてもらいたい。
盛り上がりを欠いたのは国政野党の責任もある。共産党系新人の出馬表明が告示直前となり、自民党元参院議員で知名度に勝る現職の勝利が確実視された。
野党系の軸となるべき立憲民主党は候補の擁立を見送り、自主投票を決めた。野党勢力を結集できず、市民に選択肢を示せなかったつけは大きい。
政策論争を通してこそ、政治に対する有権者の関心は高められるはずだ。候補擁立を断念した経過の総括が必要となる。
新型コロナウイルス禍の収束後を見据え、中原氏は新潟市を発展させるビジョンを積極的に語らなくてはならない。
市民の側も関心を持って市政に関わっていきたい。
