次々と判明する教団側との接点を追及されても納得のいく説明はなく、疑念を深めるばかりだった。更迭は当然であり、岸田文雄首相の判断は遅きに失した。
本人に説明責任を丸投げし、毅然(きぜん)とした対応をしなかった首相の任命責任は極めて重い。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係が追及されていた山際大志郎経済再生担当相が24日、首相に辞表を提出した。事実上の更迭とみられる。
山際氏は2018年に教団主催の会合に出席し、韓鶴子(ハンハクチャ)総裁と対面した。19年にも韓総裁と集合写真を撮っていたなど、複数の接点が判明した。
韓総裁との面会は当初、「覚えておらず事務所に資料がない」として公表しなかったが、インターネットに写真が出回り、記者団の指摘を受けて認めた。
16年にネパールで開かれた教団関連団体のイベント出席を報じられると、国会答弁では「報道を見る限り出席したと考えるのが自然だ」などと述べていた。
山際氏は辞表提出後、官邸で記者団に「外部から指摘されることで後追いになってしまった」と釈明したが、到底納得できない。
18日の衆院予算委員会で「これから新しい事実が出てくる可能性がある」と答弁していたことも、問題の重さを認識しているとは思えなかった。
山際氏と教団の関係は不明な点が多い。山際氏は閣僚を辞任しても説明責任を果たすべきだ。
山際氏以外にも政権幹部と教団の接点が確認されている。これで幕引きにしてはならない。
教団との接点が次々と浮上しても、議員個人が説明するべきだとして、人ごとのような対応に終始した首相の姿勢にも問題がある。
首相は今年8月の内閣改造で、教団側との接点が判明した閣僚を交代させた一方、改造当日の昼に教団側との接点を認めた山際氏を、午後の改造で留任した。
それから2カ月以上の間、疑念が膨らみ続けても首相が自ら動くことはなかった。
内閣支持率が低下する中、閣僚の辞任は政権に追い打ちをかける。それを警戒したのだろうが、かえって首相の危機感の乏しさが浮き彫りになった。
懸念されるのは、今後の国会審議への影響だ。山際氏は政権の看板政策である「新しい資本主義」の実現や、新型コロナウイルス対応で中心的な役割を担っていた。重要政策が停滞しないか。
物価高対策を柱とする総合経済対策は、28日の閣議決定を目指して大詰めの調整が進む。その直前に担当閣僚が辞任したのでは、地域経済や家計、企業などへの目配りを欠く恐れがある。影響を生じさせてはならない。
首相は政権運営の手綱を、しっかり引き締めてもらいたい。
