忠誠心の高い人物でポストを固め、異論を排除する「1強体制」が確立された。

 独裁的な姿勢が強まり、経済、外交面にも影響するのは必至だ。国際秩序が不透明さを増すことに懸念が募る。

 中国共産党は第20期中央委員会第1回総会で、習近平総書記(国家主席)の3期目続投を正式決定し、新指導部が発足した。

 習氏を含む最高指導部7人のうち、4人の新任ポストを習氏側近らが独占し、厚遇された。

 習氏の元部下で上海市トップの李強氏が序列2位となり、来年の首相就任はほぼ確実とされる。

 習氏は引退年齢の慣例を無視して異例の3期目に突入するが、今回の人事で後継者は示唆されなかった。4期目以降の長期支配を視野に入れているとの見方がある。

 新指導部の人選は当初、党内バランスを重視して進められた。ところが直前になって、李克強首相ら習氏の意に沿わないメンバーは全員排除されたという。

 習氏は総書記就任以来、権力の集中を図ってきた。留任した2人も含め、「イエスマン」だけで固めた新体制の確立は強権ぶりを改めて印象付けた。

 個人独裁を防ぐために党が築いてきた集団指導体制が、事実上瓦解(がかい)した意味は重く、危うさもはらんでいる。

 新指導部が直面する課題の一つは、経済の立て直しだ。

 習氏が党の成果と誇示し、継続している厳格な新型ウイルス感染症対策「ゼロコロナ」は、国内の生産と消費を圧迫し、経済を停滞させている。

 これまでは李首相が経済の失政に歯止めをかけるブレーキ役になってきたが、今後5年不在になるとの指摘がある。

 大国が誤った経済政策を続ければ、日本を含む世界経済にも大きな影響を与える恐れがある。

 先日閉幕した第20回党大会で、習氏は何度も「団結」を強調した。習氏と共産党への国民の忠誠心を高めさせ、言論統制や少数民族の抑圧、台湾統一に向けた強硬姿勢を加速させるのは間違いない。

 中央軍事委員会の人事では、68歳を超えた軍制服組トップが副主席に留任した。中国による台湾侵攻に神経をとがらす米国との対立に備えたものとみられる。

 日本政府は、中国の対外姿勢が一層高圧的になるとみて警戒を強めている。沖縄県・尖閣諸島を巡る不測の事態も起きかねない。

 東アジアの平和と繁栄に向けては、日中両政府が意思の疎通を図っていくことが不可欠だ。

 11月にはインドネシアで20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開かれる。日本政府は首脳会談を模索する構えだ。

 岸田文雄首相は、懸念や課題を直接伝えるためにも、大事な機会を逃してはならない。