自らの政治資金を巡る問題を明快に説明できず、政策を議論する環境を整えられないのでは、閣僚の適格性に疑問符がつく。
岸田文雄内閣の閣僚に、政治資金の問題が相次いで発覚した。
寺田稔総務相は、自身の政治団体が、事務所の賃料を寺田氏の妻に支払っていたほか、関係する政治団体が故人名で政治資金収支報告書を提出、押印していた。
事務所については、寺田氏とビルを共有する妻に、2012~21年、計2688万円を払った。
寺田氏は、妻の持ち分に対する支払いで適正だと主張。妻は会社社長で自身の扶養家族ではないとし、「経済的に別の主体であり、合法的な行為だ」と強調した。
しかし、家族であることは明白で、市民感覚とずれがある。政治資金を家族に環流している印象を禁じ得ず、適正さを疑う。
衆院の審議では、収支報告書への故人の署名、押印は、政治資金規正法違反になると答弁したが、翌日に罰則の対象ではないと訂正し、不安定さを露呈した。
寺田氏が務める総務相は、政治資金規正法を所管する。政治資金の使途を厳格に見極めるべき立場なのに、認識が甘くないか。
野党から辞任要求も出ていることを重く受け止めるべきだ。
閣僚では、秋葉賢也復興相も、自身の二つの政治団体が11~20年に、秋葉氏の妻と母親に事務所賃料として計約1400万円を支払っていたことが分かった。
17年には義理の兄が代表を務めていた政治団体に600万円を寄付したと認めた。
秋葉氏は「適正な家賃を支払うのは当然だ」としており、寺田氏と同じ認識だ。
「政治とカネ」を巡って閣僚が不信を招き、政策論戦が深まらないのは由々しき事態だ。
政府内では、閣僚以外にも問題が露見している。
18年にLGBTなどの性的少数者を「生産性がない」と差別的な言葉で表現し、非難された杉田水脈(みお)氏は、総務政務官として国会審議に臨み、発言取り消しと謝罪を求められたが応じなかった。
人を中傷するツイッターに「いいね」を押し、名誉を傷つけたとして東京高裁に賠償を命じられたが、審議では、総務省が取り組む誹謗(ひぼう)中傷対策キャンペーンを「存じ上げない」と答弁した。
政府の一員としての自覚があるか疑わしい。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題では、霊感商法被害などを扱う消費者行政も担当する大串正樹デジタル副大臣が、教団関連団体の求めに応じて「推薦確認書」に署名していた。
首相は改造内閣を有事に対する「政策断行内閣」と位置付けたが、現状はあまりにおぼつかない。もっと厳しい目で閣内を見詰め、適切に対処していくべきだ。