暮らしに根差した文化を長年にわたり保存、継承してきた地域にとって誇りと励みになるものだ。魅力をさらに発信し、伝統を未来へつなぐ力にしたい。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の評価機関は、盆踊りなどで伝承してきた24都府県41件の民俗芸能「風流踊(ふりゅうおどり)」を、無形文化遺産に登録するよう勧告した。

 41件には、柏崎市の「綾子舞」と魚沼市の「大(だい)の阪(さか)」が含まれる。今月下旬から開かれるユネスコ政府間委員会で、登録が勧告通り決定する見通しだ。

 一括で登録を申請した41件全てが認められるのは、日本の地域文化の多様性を表している。

 風流踊は、盆踊りや念仏踊りなど、地域ごとにさまざまな形で親しまれてきた。地域の歴史や風土などが反映されている。

 ルーツは中世にさかのぼり、華やかな、人目を引くという「風流」の精神を体現する。演者は趣向を凝らした衣装で着飾り、笛や太鼓ではやし立てる特徴がある。

 にぎやかに踊ることで災厄を払って豊穣(ほうじょう)を祈り、安寧な暮らしを願う点なども共通している。

 地域の精神的な支柱として伝承されてきたものだろう。

 綾子舞は、柏崎市女谷(おなだに)地区に500年以上前から伝わる古典芸能で、女性が踊る「小歌踊(こうたおどり)」、男性が演じる「囃子舞(はやしまい)」と「狂言」の3種類で構成される。

 小歌踊では赤いかぶり物や鮮やかな振り袖を着た女性が扇などを手に舞い、優美な世界を醸す。

 「大の阪」は江戸時代、三国街道の宿場町として栄えた魚沼市堀之内地域に、縮商人によってもたらされたと伝えられる。

 哀調を帯びた節回しで、太鼓や笛の音に合わせ、ゆったりとした手ぶりと足運びで踊るもので、約300年、受け継がれてきた。

 登録で、地域固有の文化が世界的に認められるのは誇らしい。継承に力を注いできた地域の人々とともに喜びたい。

 一方で、取り組まなくてはならない課題もある。人口減少や過疎化で担い手が減っていることだ。

 綾子舞は女谷地区の高原田(たかんだ)と下野(しもの)の両集落で受け継いできたが、1970年ごろ後継者難に直面した。地元小中学生への伝承学習や、市民を対象にした養成講座などに地道に取り組んできた。

 引き続きこうした活動は欠かせない。登録で継承への関心が高まることを期待したい。十分な取り組みを続けるには、国による予算措置も必要だ。

 風流踊に限らず、地域の伝統芸能は、災害が多い日本で、復興の精神的な基盤に位置付けられた。

 地域ごとに続いてきた盆踊りや神楽なども、地域住民のよりどころとなってきた。

 「文化の日」の今日は、郷土と人々をつなぐ文化や伝統芸能の価値についても見つめ直したい。