温暖化対策を巡る各国の結束力が問われている。各地で頻発する異常気象による災害を抑えるためにも、国際社会は取り組みを加速させるべきだ。
国際的な地球温暖化対策を協議する国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が、エジプトで開幕した。
18日までの期間中、各国はそれぞれの対策を表明し、議論を交わす。その上で2030年を目標に温室効果ガス排出削減の加速に向け作業計画をまとめる予定だ。
昨年のCOP26は、パリ協定を踏まえ産業革命前と比べた今世紀末の気温上昇を1・5度に抑える努力を続ける方針で合意した。
今回は実効性ある道筋を示すことが求められる。国連環境計画は、対策を現状から強化しなければ2・8度上昇すると警告する。
焦点となるのは、どれだけ各国が危機感を共有し、積極的に現状の削減目標を引き上げるかだ。
足元では不安材料が多い。
温暖化対策をけん引してきた欧州では、ロシアによるウクライナ侵攻で天然ガスの供給が絞られ、温室効果ガスの排出量が多い石炭回帰の動きが出ている。
排出量の世界1、2位を占める米国と中国は、昨年合意した削減を巡る協力関係が停止している。ペロシ米下院議長が今年8月台湾を訪問したことに、中国が強く反発していることが背景にある。
世界経済は新型コロナウイルス感染拡大による低迷から回復基調にあるため、排出削減に遅れが生じる懸念が指摘されている。
会議では、初日から先進国と発展途上国の対立が鮮明化した。
途上国は地球温暖化の被害の最前線で、記録的洪水や干ばつに襲われ、多くの人が厳しい飢えに直面している。島しょ国での海面上昇も深刻だ。経済力が弱く、インフラに乏しい国ほど被害が深刻に出る傾向が強い。
議長国エジプトなどが訴えてきた途上国の被害支援を扱う「損失と被害」分野が、会議の正式議題となった。これに対し先進国側は新たな負担が増えることに警戒感を強めている。
先進国と途上国の双方は議論を深め、よりよい枠組みを作ってもらいたい。中国やインドなど排出が多い大国や新興国との連携を強化していくことも欠かせない。
日本がどういう対策や目標を打ち出すのかも注目される。
岸田政権は石炭火力発電の廃止方針を示していない。そのことに国際社会の批判は根強い。
30年までの日本の温室効果ガス削減目標は13年度比で46%減としているが、さらなる引き上げには消極的だ。
国内でも毎年のように異常高温や記録的豪雨などに見舞われ、大きな被害や犠牲者を出している。
対策は待ったなしだ。日本の積極姿勢が求められる。
