新型コロナウイルスの新規感染者数が、本県を含め全国でまた増加に転じ始め、流行「第8波」が起きる可能性が指摘されている。警戒を強めたい。

 冬を控え、懸念されるのはインフルエンザとの同時流行だ。医療態勢が逼迫(ひっぱく)することのないように準備を進めなくてはならない。

 新型ウイルスの新規感染者数は、前週の同じ曜日を上回る日が多く、8日には県内でも2千人に迫る患者が確認された。

 イベントが各地で開かれ、人の動きが活発になっていることが影響しているとも推測されている。

 政府は今冬、新型ウイルス患者が1日当たり最大45万人、インフルエンザ患者が30万人の計75万人発生する同時流行を想定する。

 医療現場の混乱を防ぐため、重症化リスクが高い高齢者や基礎疾患がある人には発熱外来の受診を推奨する一方で、重症化リスクが低い人は検査キットやオンライン診療の活用を促している。

 厚生労働省は、検査キット約2億4千万回分と、インフルエンザも一緒に診断できる同時検査キット約3800万回分を確保した。

 だが今夏には、メーカーの在庫は豊富だったのにキットが行き渡らない事態になった。

 供給への不安が拭えない。必要な時には確実に利用できるよう、配備してもらいたい。

 オンライン診療では、医師にアクセスして病院に行くべきか相談したり、必要な薬を配送してもらったりできる。

 しかし、取り入れている医療機関は、昨年末時点で約1万7千と全体の約15%に過ぎない。受診できる機関をもっと増やす必要があるだろう。

 第8波対策として、政府はワクチン接種の加速が必要とするが、4回目の接種は進んでいない。

 オミクロン株に対応した新ワクチンは9月20日に接種が始まったものの、接種率は開始1カ月で全人口のわずか4%だ。

 国立感染症研究所が20~60代に行ったアンケートでは、3回接種した4200人のうち、約3割が4回目の接種を迷っていた。副反応のつらさやワクチンを打っても感染する可能性があるためだ。

 本県の接種率は10月末時点で44・3%になっている。ただ、感染者の大半を占める60歳未満では15・8%にとどまる。

 ワクチンは重症化を防ぐ効果があるとされ、乳幼児の接種も始まっている。政府や関係機関には市民に理解が深まるよう、丁寧に情報発信してもらいたい。

 感染が始まってからは、行動制限や自粛が求められる年末年始が続いたが、今年はそうした動きはなく、社会経済活動と感染抑止の両立が必要になる。

 再び逼迫した状況を招かないために、引き続き一人一人が感染防止に気を配りたい。