戦火のこれ以上の拡大はあってはならない。国際社会はミサイル発射の経緯を徹底的に調べ、冷静に対応することが求められる。
ポーランド政府は15日、ロシア製のミサイルがウクライナとの国境から約7キロにある東部プシェボドフに着弾して、2人が死亡したと発表した。
2月にロシアがウクライナを侵攻して以来、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に着弾し犠牲者が出たのは初めてだ。
ロシア国防省は「ウクライナ・ポーランド国境でいかなる攻撃もしていない」と否定した。
バイデン米大統領は「ミサイルはロシアから発射された可能性は低い」と述べた。
複数の米当局者は初期段階の分析として、着弾したミサイルは、ウクライナ軍が発射した迎撃ミサイルとの見方を示した。
NATO加盟国に被害が及んだ衝撃は大きい。着弾直後は、紛争拡大の危機感が一気に広がった。
北大西洋条約第5条は、加盟国への攻撃はNATO全体への攻撃とし、武力行使を含む必要な措置を取ると規定しているからだ。
この集団的自衛権が発動されれば、ロシアとNATOとの直接交戦になり、世界戦争につながるリスクがある。
NATOと先進7カ国(G7)は、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)開催中のインドネシアで緊急首脳会合を開いた。着弾に関するポーランドの調査を支援し、適切な措置を取るため緊密に連携することで一致した。
NATO加盟国には慎重な対応を求めたい。誰がどこからミサイルを発射したのか証拠を集め、真相を究明しなければならない。
ウクライナのゼレンスキー大統領は着弾直後、ロシアを念頭にして、NATOの集団安全保障に対する攻撃だと非難し、「行動が必要だ」と訴えた。情報をしっかり分析した上で、メッセージを発信してほしい。
15日は、ウクライナ全土で、ロシア軍による約90発のミサイル攻撃があり、プシェボドフから南に約70キロのリビウにも攻撃があった。ウクライナ空軍は73発を迎撃したと発表した。
不測の事態をきっかけに、NATO加盟国へ戦火が広がるリスクがあることが浮き彫りになった。
10月末には、ウクライナ軍によって迎撃されたロシアのミサイルが、隣国モルドバの集落に落下し、数軒の家屋の窓が損壊した。
G20サミットは16日、参加国の大半がウクライナでの戦争を強く非難したと明記した首脳宣言を採択して閉幕した。
ロシア制裁などに関しては異論が出たとも併記し、採択を見送る事態は回避した。
ロシアは宣言を重く受け止めて、一刻も早くウクライナから撤退するべきだ。