投票価値が不平等な状態は速やかに是正する必要がある。国会は党利党略に陥ることなく、選挙制度の抜本的な改革に向けた議論を加速させなくてはならない。
「1票の格差」が最大3・03倍だった7月の参院選は憲法が求める投票価値の平等に反するとして、全国の高裁・高裁支部に起こされていた計16件の訴訟で、一審判決が出そろった。
各地の判決は、「違憲」が1件、「違憲状態」が8件、「合憲」が7件と判断が分かれた。
前回2019年選挙時の一審判決には違憲判断がなく、違憲状態も2件のみだった。一方、前回14件だった合憲判断は半減した。
是正されない格差に厳しい見方を示す判断が大幅に増えた。国会は重く受け止めるべきだ。
国会は16年選挙で、隣接県を一つの選挙区とする「合区」を導入するなどして格差を5倍から3倍程度に縮小したが、以降はほぼ横ばいで推移している。
違憲判決を下した仙台高裁は、「合区」で格差が縮小されても「正当化されるものではない」と指摘、「さらなる是正を図らず格差を放置した」と指弾した。
判決の多くは、格差縮小への動きが鈍い立法府に対して改革を強く迫ったと読み解ける。
議論さえ続けていれば違憲は免れるという楽観的な考え方は、通用しなくなったといえるだろう。
参院の在り方や選挙制度を議論する参院改革協議会は6月、格差是正に向けた結論を先送りした。各党が求める選挙制度に隔たりが大きかったためだ。
自民、立憲民主両党は全都道府県から各1人以上を選出して「合区」の解消を求め、公明党と日本維新の会は「全国11ブロックの大選挙区制」を提唱する。
制度変更は議席数に直結するだけに、自党に有利な制度にしたいとの思惑が透ける。25年選挙で確実に新制度を導入できるよう議論を急いでもらいたい。
民意を適切に反映させる仕組みを整えることは民主主義の基盤だ。党の利害を超えた真摯(しんし)な取り組みが求められる。
一方、衆院小選挙区定数の「10増10減」を実施し、格差を2倍未満とする改正公選法が成立した。
本県では小選挙区を6から5に減らし、上越と魚沼地域、燕と三条がそれぞれ一体化するなど区割りが見直される。
人口比を反映しやすい議席配分方式に基づくため、都市部への議席集中は避けられない。
人口減が続く中、地方の声が国政に届きにくくなる恐れがある。国とのパイプが細くなり、県勢がそがれることも懸念される。
投票価値の平等に配慮しつつ、地方の民意を反映できる最良の選挙制度を探ってほしい。衆参両院はあるべき姿を追求する姿勢を忘れてはならない。
