違法行為を排除し、被害を減らしていくための基になる調査だ。しっかりと調べ、教団の実態に迫る必要がある。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る問題で、永岡桂子文部科学相は宗教法人法に基づく質問権を行使した。
教団に対する解散命令の請求を視野に入れており、明白な法令違反が確認されれば、裁判所に解散命令を請求する。
1995年の宗教法人法改正で調査権限が盛り込まれて以降、初の権限行使となる。
行使に先立ち、永岡氏は宗教法人審議会に諮問し、了承を得た。
諮問内容の詳細は非公表だが、組織としての意思決定の仕組みや、資金の流れを解明する内容とみられている。
焦点となるのは、教団による違法行為の「組織性、悪質性、継続性」を証明できるかどうかだ。
旧統一教会については、組織的不法行為や法的責任を認定した民事判決が22件あり、損害賠償額は少なくとも計14億円に上る。
信者による高額献金が大きな問題になっており、この点にも踏み込まざるを得ない。
ただ宗教学者の間では、質問の対象が、資産管理の現状など「世俗的な側面」に限られ、布教や献金の集め方といった「宗教活動の側面」には立ち入れないとの考え方が有力だという。
信教の自由と政教分離の原則を重んじる宗教法人法の趣旨から、抑制的にならざるを得ないとの見方があるのだろう。
これに関し審議会は、調査は「信教の自由を侵害しない」との認識で一致した。宗教法人法を順守しつつ、厳正に対処し、調査を尽くしてもらいたい。
懸念されるのは、教団が調査に適切に対応するかどうかだ。
調査の結果、解散命令を受ければ、宗教法人格を失うことになる。教団には死活問題だ。
調査には強制力がなく、回答拒否や虚偽回答をしても10万円以下の過料が科されるに過ぎない。
十分な回答がなければ追加質問が必要になり、調査終了までに時間がかかる恐れもある。
教団側は調査に対し「誠実に対応する」としている。言葉通りに、あらゆる質問に誠意を持って答えるかどうか注視したい。
前例のない請求権行使となった今回は、手探りで進められた部分が多くあった。
審議会への諮問内容だけでなく、議論の内容なども非公開とすることが決定した。
調査の性質上、秘密保持が求められることは理解できる。
とはいえ、モデルケースとなるだけに、審議会のチェック機能が適切に働いたかどうかといった手続き全体の検証は欠かせない。
行使の過程を検証できる積極的な情報公開を求めたい。
