感染下の緊急事態で早急な対応が求められた状況だったとはいえ、巨額の不適切支出は目に余る。関係する省庁や自治体、団体は原因や経緯をきちんと検証しなければならない。
会計検査院が2021年度決算検査報告を公表した。
国が19~21年度に予算計上した新型コロナウイルス対策費関連の1367事業を調べた結果、予算総額94兆4920億円に対し、支出されたのは約8割の76兆4921億円で、残りの約2割が未執行だったことが分かった。
未執行のうち22年度に繰り越したのは13兆3254億円、使われなかった「不用額」は4兆6744億円に上った。
多額の未執行や不用額が生じたのは、必要な事業の精査が不十分だったからだ。
検査院は「国民の理解を得て対策を進めるためには、予算の執行状況などの情報提供を分かりやすく伝える必要がある」と強調している。関係機関は指摘を重く受け止め、責任を果たすべきだ。
事業ごとの検査で、無駄遣いを指摘されたり改善を求められたりしたのは全体で310件、総額455億円に上った。このうちウイルス関連の不適切支出などは、2割超の100億円以上だった。
感染患者を受け入れる病床確保のための交付金では、病床数や単価の算定を誤り、約55億円が過大だった。病院側の制度理解が不十分だったことや、都道府県が十分に審査していなかったことが原因とみられる。
厚生労働省は「ぎりぎりの環境の中で対応してもらった結果で、故意ではない」とするが、国民の信頼を揺るがしかねないずさんな予算執行は見過ごすわけにはいかない。同様の不適切支出が他にもないか確認を徹底すべきだ。
検査院の調査では、学校の一斉休校を受けて始まった家庭学習用のモバイルルーターの貸し出しで調査対象機器の約6割が使われていなかったことも分かった。
事業はインターネット環境が整っていない家庭を支援する狙いがあったが、希望者が少なかった。
感染症対策として導入され、使途が原則自由な地方創生臨時交付金については、自治体による効果検証の公表が進んでいないことも判明した。使途に花火大会やライトアップなど感染症対策との関連が疑問視された例もある。
政府はウイルス対策や物価高対策で財源を国債に頼り、巨額の当初予算や補正予算を計上してきた。不要不急の事業を組み、税金を無駄遣いするようなことがあってはならない。
本県関係では、義務教育費関連など7件で計9300万円が不当とされた。該当する自治体は返還などの対応をするとしている。公金による事業執行には常に緊張感を持って当たってもらいたい。
