スポーツの祭典とカネを巡る新たな疑惑が浮上した。不正の根はどこまで深く広がっているのか。

 東京五輪・パラリンピック本番前に実施されたテスト大会関連の入札で、談合の疑いがあることが明らかになった。

 東京地検特捜部と公正取引委員会は、独禁法違反(不当な取引制限)の疑いで、事業を受注した広告大手の電通や博報堂、イベント制作会社など計6社を28日までに家宅捜索した。

 五輪汚職事件では、大会スポンサー企業などから総額2億円近くの賄賂を受け取った疑いで大会組織委員会元理事が4回起訴されている。今回の談合事件は、汚職事件の捜査の中で出てきた。

 疑惑は大会運営に関わった業界全体に及んでいる。捜査当局は不正の構図にメスを入れ、全容を解明しなければならない。

 談合の疑いが持たれているのは、テスト大会の計画立案などに関する業務委託事業の一般競争入札だ。2018年に競技会場1~2カ所ずつ技術や価格に基づく総合評価方式で計26件実施された。

 捜索を受けた電通や博報堂など6社を含めた9社と一つの共同企業体が落札し、その後のテスト大会や本大会の業務などを随意契約で受注した。公表された契約総額だけで約200億円に上る。

 落札した1社は、談合などを自主申告した場合に適用される独禁法の課徴金減免制度に基づき受注調整があったと申告している。

 事件の根深さをうかがわせるのは、組織委の職員が受注調整に関与した疑いがあることだ。

 事業発注に関わった組織委大会運営局の元次長は取りまとめ役で、電通などから出向した職員は、企業側に入札への参加意向を聞き取っていた。

 競技ごとに実績のある企業をまとめた一覧表も電通の協力を得て作成され、企業の割り振りに利用されたとみられる。

 一方、入札対象の26件のうちほぼ半数が1社しか参加していなかった。事前に受注企業が決まっていたのではないか。

 特捜部と公取委は、出向者が落札企業側の共犯に当たる可能性や、企業側が本大会の随意契約を見据え受注調整した疑いがあるとみて調べている。事実なら悪質だ。

 事件の背景には、電通の「1強体制」もあったと指摘されている。組織委に多くの出向者を出し、汚職事件ではスポンサー集めを一手に担っていた。

 短期間に多くの競技を行う五輪には運営ノウハウを持つ業者の協力が不可欠だが、一方で公正な競争がゆがめられてはならない。

 談合事件を受け、東京都は独自に調査することを決めた。汚職事件についても国際大会に向けた再発防止策を検討している。

 形だけの調査で終わらせず、うみを取り除く覚悟で臨むべきだ。