寒さが厳しくなり、電気の使用が増える時季になった。無理のない範囲で、できることから取り組み、効率的な節電を心がけたい。

 政府が全国の家庭や企業に要請していた冬の節電が1日に始まった。数値目標はなく、期間は来年3月末までだ。

 夏に続く要請で、冬では2015年度以来7年ぶりになる。

 電力の供給余力を示す予備率は、最低限必要とされる3%を確保できる見通しだが、予断は許さない状況だという。

 3%の確保は、老朽化で休止中だった火力発電所の再開や、定期点検中の原発の再稼働を前倒したことなどによる。

 災害や発電所の運転トラブル、極端な気温低下といった悪条件が重なれば、需給逼迫(ひっぱく)の警報や注意報が発令される可能性もある。

 電力を安定供給するための節電要請は理解できる。

 ウクライナ危機や円安で燃料価格は高騰しており、政府の試算では、電気料金は昨年から2~3割上昇している。

 食料品なども値上げが相次いでいる。節電により、少しでも家計の負担を和らげたい。

 家庭での節電は小さな行動の積み重ねが大切だ。

 エアコンの設定温度を21度から20度に下げると、1日9時間の使用の場合、年換算で約1650円を節約できる。

 不要な照明を小まめに消して、家族が一緒の部屋で過ごすなど、生活の工夫も必要だろう。

 電力会社は政府と連携して、節電協力者へのポイントサービスを実施する。年内に登録した家庭に一律2千円相当のポイントを配るほか、節電の実績に応じてポイントが付与される。

 制度のメリットなどを分かりやすく周知してもらいたい。

 一方、東北電力など電力大手6社は4月からの大幅な電気料金の値上げを経済産業省に申請したか、申請を検討している。

 燃料費の高騰分を電気料金に反映させる燃料費調整制度は、価格転嫁できる上限に達しており、業績が悪化しているためという。

 東北電の場合、大半の一般家庭が契約する規制料金で平均32・94%の値上げを申請した。

 経産省の審査で、値上げ幅は圧縮される可能性はあるが、東北電の申請通り認可された場合、標準的な家庭で1カ月当たり2717円の負担増になる。

 政府は、1月からの光熱費と燃料代の家計負担を軽減する支援策を実施する。1~9月までで総額4万5千円程度を軽減できると見込んでいる。

 しかし、支援は場当たり的で、節電要請に矛盾するようにも見え、消費者の混乱を招きかねない。

 脱炭素社会の実現に向けて私たちも、一時的ではなく常に節電の意識をもち、実践していきたい。