同性カップルがパートナーの法定相続人になれない、子どもの共同親権を持てないといった不利益を受けないように議論を促した。

 国会はこれ以上先送りせず、同性パートナーが家族になれる法制度を早急に検討する必要がある。

 同性婚を認めていない民法や戸籍法の規定は憲法に違反するとして、同性カップルら8人が起こした訴訟の判決で、東京地裁は法制度のない現状を「憲法違反の状態」とする判断を示した。

 判決では、婚姻によって家族関係や相続権、配偶者控除などの法的保護を得られることは「個人の尊厳に関わる重要な人格的利益だ」とし、この点は同性愛者も変わらないと位置付けた。

 その上で、同性愛者がパートナーと家族になる法制度がないことは「人格的生存に対する重大な脅威」「個人の尊厳に照らして合理的な理由はない」と言及した。

 憲法24条2項は、婚姻についての法律を「個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない」と定めている。判決の根拠はこれに基づく。

 同種訴訟の判決では、2021年3月に札幌地裁が違憲、今年6月に大阪地裁が合憲と判断が分かれた。ただし、大阪の判決は将来的な違憲の可能性にも触れた。

 今回の判決は、同性カップルの法的保護には多様な形が想定されるとした。具体的には「国会で議論されるべきで、立法裁量にゆだねられている」と指摘した。

 札幌、大阪と同様に立法措置の必要性を強調、対応を促したものだ。放置は許されず、国会は指摘を重く受け止めねばならない。

 動きは鈍い。19年に野党が同性婚実現の民法改正案を提出したが廃案になった。21年に与野党が関連法案提出に合意したが、自民党内の議論が紛糾し見送られた。

 背景には、婚姻を異性間に限定してきた伝統的な家族観を重視する保守層の反発がある。

 同性婚について、岸田文雄首相は「極めて慎重な検討を要する」と述べるにとどめる。

 そうした姿勢は次世代に受け入れられる態度とは思えない。同性カップルは社会で一定程度浸透し、若い世代を中心に同性婚制度などへの理解も進んでいる。

 研究者の調査によると、同性婚に「賛成」「やや賛成」の人は15年の51・2%から19年は64・8%となり、全世代で増加している。

 同性カップルを婚姻に相当する関係と認める「パートナーシップ制度」は新潟市、三条市など200を超す自治体が導入している。

 先進7カ国(G7)で同性婚や同性カップルの法的保護を容認していないのは日本だけだ。

 「法の下の平等」に照らせば、同性婚は当然認められていい権利と言える。社会の偏見や差別をなくすためにも、多様な家族観を認める法制度を整えねばならない。