幹部職員は進言されても不適切な手法を改めなかった。責任感の欠如も甚だしい。

 国民の共有財産である基幹統計をないがしろにした事態の深刻さを、国土交通省は改めて肝に銘じなければならない。

 建設業者の受注に関する国の統計調査で、国交省がデータ書き換えを都道府県に指示したり、同じ業者の受注を二重計上したりした問題で、第三者委員会が検証報告書を公表した。

 報告書では、問題が起きた原因として、十分な人員が配置されず、情報共有も不十分だったことを挙げた。

 都道府県への書き換え指示は、遅くとも2000年には始まっていたとした。動機については人的余裕がなく、見直す機会もないまま安直な手法を続けたと結論付けている。

 二重計上が国内総生産(GDP)算出に影響を与えたかには言及しなかった。

 統計の利用者や事業者を軽視する国交省の姿勢が浮き彫りになったといえよう。

 あきれるのは、厚生労働省の毎月勤労統計調査の不正を受けて実施された19年の一斉点検の際、当時の国交省担当係長が書き換え問題を総務省に報告するよう相談したが、上司が消極的で見送られたことだ。

 同年6月ごろには、着任間もない課長補佐が書き換え中止を訴えたが室長らは動かず、公表しないと発言したという。

 担当の管理職は任期が短いといい、問題を先送りしたままやり過ごすつもりではなかったのか。そうだとすれば、公僕としての職業倫理に背くものであり、罪深い。

 第三者委は「隠蔽(いんぺい)工作とまでいうかはともかく、幹部職員の責任回避」と指弾している。「事なかれ主義のあらわれ」とも指摘した。

 国交省が是正の機会を何度も逃していたのは消せない事実だ。猛省しなければならない。

 悪質なのは、会計検査院に問題を指摘され、国交省が都道府県への書き換え指示を撤回した一方、同省職員はその後も書き換えを続けていた点だ。

 岸田文雄首相は書き換えについて「正当化したり、隠蔽したりするためではない」としたが、国交省の姿勢を見ると、素直にうなずけない。

 今回の速やかな検証を指示したのも岸田首相だ。客観的な立場である外部の専門家に任せる形で検証を早々に終え、報告書は年末年始を含む約3週間でまとめられた。

 首相は通常国会冒頭の施政方針演説の中で、この問題について陳謝した。早期の幕引きを狙う政権の意向が透ける。

 一方で、第三者委の調査では書き換え以外にも計算の誤りなどが見つかり、解決すべき課題が残るとくぎを刺している。

 国交省は所管する全統計の点検、過去のデータ復元に向けた作業チームの立ち上げなどに取り組むとしている。

 統計に対する信頼回復のためにも、政府全体として再発防止へ真摯(しんし)に対応すべきだ。