ロシアによるインフラ攻撃で電力不足が深刻化し、多くのウクライナ国民が極寒の中で命の危険にさらされている。極めて憂慮すべき事態だ。

 国際社会は現地への支援が早く行き渡るよう、結束して力を尽くしてほしい。

 ロシアは真冬の12月に入ってもミサイルや無人機によるウクライナへの攻撃を続け、発電施設などのインフラを破壊している。

 電力供給を止めることで、人々を肉体的、精神的に凍えさせ、屈服させる狙いなのだろう。

 氷点下20度にもなる冬の寒さを武器にした非人道的な攻撃は許されない。国際社会が強く非難するのは当然だ。

 多くのウクライナ国民が満足な暖房もない避難所での生活を余儀なくされている。病院は発電機の確保に追われ、負傷した兵士らの治療もままならない。

 世界保健機関(WHO)は、この冬で「数百万人の命が脅かされるだろう」と指摘した。

 危機的な事態を受け、国際社会は支援の強化を打ち出している。

 パリで開かれた国際会合では、日本を含む約50カ国と20超の国際機関が参加し、電力や食料などの供給確保へ資金面だけでなく、現物供与の援助も確認した。支援総額は約1450億円に上った。

 ウクライナの国民は一刻も早い支援を待っている。暖かい環境で十分な食料を得られるよう、関係機関はスピード感を持って当たってほしい。

 医療機関での資材不足なども心配だ。現場のニーズに沿ったきめ細かな支援が欠かせない。

 先進7カ国(G7)首脳もオンライン形式による会合を開き、ロシアの攻撃を強く非難した上で、攻撃の中止と無条件撤退を求める首脳声明を発表した。

 ウクライナのインフラ復旧や越冬対策での支援も強調した。G7は一致して国際支援を主導する役割を果たしてもらいたい。

 会合にはウクライナのゼレンスキー大統領も出席し、各国にさらなる武器供与を求めた。これに対しG7は軍事支援を継続し、特に防空システムの供与に「直近の焦点を当てる」とした。

 岸田文雄首相は、緊急無償資金協力による約3億4千万円の越冬支援などを補正予算で決めたことを説明した。

 日本は資金協力にとどまらず、災害対応などで培ったノウハウや技術を生かした人道支援にも力を入れていくべきだ。

 侵攻が始まって10カ月近くとなり、最近はロシア空軍基地が無人機で攻撃された。プーチン政権はウクライナ側の攻撃とみて、報復強化の可能性を示唆している。

 戦禍の拡大と長期化が懸念される。国際社会は早期停戦をロシアに強く働きかけ、糸口を見いださなければならない。