日本の水産資源を巡る深刻な状況が浮かび上がった。海や川から大きな恵みを受けてきた本県にとっても切実だ。
気候変動がどのような影響を及ぼしているのか、国は早急に把握する必要がある。
温暖化などの気候変動により漁獲量や養殖期間に影響があると都道府県がみている水産物が61品目に上ることが、共同通信の全国調査で分かった。
漁獲量の減少といったマイナスの影響を指摘する回答が目立つ。特にノリ類は17府県がマイナスの影響を挙げた。
水温が上昇したことによって養殖開始時期が遅れたり、南方系の魚に食べられてしまったりしているという。
藻場で育つアワビ類へのマイナス影響を挙げた県も多かった。
冬の海水温が上がったことでウニが活発に海藻類を食べるようになり、その結果、藻場が失われる「磯焼け」が進んだことが原因とみられる。
本県では、海藻のホンダワラ類にマイナスの影響が見られる。1980年代後半から2000年代初めに佐渡や粟島で磯焼けが進み、打撃を受けた。
一方で、これまで取れなかった魚が取れるというプラス面を挙げる自治体もある。
暖かい水温を好むサワラ類について、14府県がプラスの影響として回答した。分布域が北上したと推測される。
本県はこの14府県の一つ。県水産課によると、サワラは2000年ごろに取れ始めた。21年の漁獲量は303トンに上った。
今回の調査以外でも、暖かい水温を好むブリの変化を聞くことが多くなった。寒ブリで有名な富山県では漁獲量が減ったが、全国で見ると水揚げは増えている。
慣れ親しんだ水産物が減り、代わりに南方系の水揚げが増える。こうした調査結果を見れば、漁場が動いたのは明らかだ。
従来と違う魚を扱うためには、漁業者は加工や販売の方法を練り直さなければならない。新たな設備投資が必要になる場合もある。
現場はいま漁船の燃料費高騰にも悩んでいる。放置すれば、漁業の後継者難は一層深刻になる。食料自給率をさらに下げることになりかねない。
魚介類や海藻の変化は未解明の部分が多い。県単位でそれを把握するのには限界があり、国がまず水産資源の変化に広く対応するべきだ。その上で影響をどう抑えるか、対策を考えたい。
県内研究機関の力も不可欠だ。取れるようになった魚の加工など積極活用を検討してほしい。
本県の食文化や食のブランド化にも深く関わってくる。なじみ深いサケやナンバンエビへの影響はどうか。食卓から海川の環境再生への視点を持ちたい。
