二度と悲劇を繰り返さないために、指摘を踏まえて再発防止策を改めて見直し、必要な改善点があれば速やかに講じるべきだ。

 従業員6人が死亡、1人が負傷した2月の三幸製菓荒川工場(村上市)の火災について、総務省消防庁が原因調査の中間報告を公表した。これとは別に三幸製菓が設置した専門家らによる火災事故調査委員会も報告書をまとめた。

 いずれの報告も出火原因や延焼の要因を指摘し、事故調査委の報告書からは会社側が積極的な防火対策を講じなかったことも明らかになった。従業員の命を守れなかった会社の責任は極めて重い。

 火災は2月11日深夜に発生し、米菓の生地の乾燥や焼きを行う製造工場を全焼した。60~70代のアルバイトの女性従業員4人と、20代の男性社員2人が亡くなった。その後、地元消防署が立ち入り検査をした。

 消防庁の中間報告は、出火原因は乾燥機内の煎餅のかすが乾燥機などの熱を受けて発火した可能性が高いとした。延焼拡大の要因には、天井に吹き付けられた発泡ポリウレタンに火が燃え移って広がったことを挙げた。

 荒川工場では2月以前も度々火災が発生し、多くが米菓の生産過程で出たかすに起因する発火だったという。かすの除去など掃除やメンテナンスが日頃十分行われていたか疑問が残る。

 事故調査委の報告書は、消防庁の報告と同様の出火原因を示すとともに、6人の犠牲者を出した原因の解明に主眼を置いた。

 それによると、火災前は米菓生産に支障がない範囲の従業員しか避難訓練に参加させず、夜間勤務者を対象にした訓練もなかった。火災報知器の警報音が聞こえても作業を続ける職場環境だった。

 防火管理者の統括工場長は防火安全に精通しておらず、多くの不備が改善されていなかった。しっかり対策を講じていれば火災は防げたのではなかったか。

 県警は過失を追及する取り調べを進めるとみられる。徹底した捜査で全容を解明してもらいたい。

 会社側は5月末に再発防止策をまとめ、9月に荒川工場を再開した。消防などの指摘を受けて対策を強化するとしている。安全最優先の取り組みが求められる。

 火災後、会社側は遺族に対し丁寧な説明をせず、強い不信感を与えた。消費者の信頼も大きく損なった。経営陣はこうした事態を招いたことを深く反省すべきだ。

 三幸製菓の火災を受け、新潟労働局は6月以降、県内米菓メーカー17社の36工場に立ち入り調査を行った。7割に当たる25工場で、機械の危険防止措置が取られていないなどの労働安全衛生法違反が認められた。

 各メーカーは、安全な職場環境に取り組む責任があることを改めて胸に刻んでもらいたい。