何の目的で政治資金を不正に処理し、巨額のカネはどこへ流れたのか。有権者への説明責任は残されており、議員辞職で疑惑の幕引きを図ることは許されない。
政治資金収支報告書にパーティーの収入などを過少記載したとして、東京地検特捜部は22日、政治資金規正法違反の罪で、薗浦(そのうら)健太郎元衆院議員(21日辞職、自民党離党)と元公設第1秘書、元政策秘書の3人を略式起訴した。
起訴状によると、元秘書2人は政治資金パーティーの会費収入や会場使用料の支出などを正確に書かず、元議員の選挙区支部と資金管理団体の収支総額約4900万円を報告書に過少に記載した。
元議員はそのうち約4600万円分の過少記載に共謀した。
元公設秘書は政治団体の会計責任者で、元政策秘書は会計業務を補佐した。規正法は、収支報告書の提出義務を会計責任者らに課しており、国会議員だった人物が共謀で立件されるのは異例だ。
元公設秘書がメールや資料で元議員に報告していたことが証拠になったとみられる。
元議員は当初、取材に対し、秘書から報告はなく「過少申告の認識はない」と関与を否定した。
ところが特捜部の任意聴取を受けて一転して関与を認め、刑事処分前日に議員辞職した。
辞職に当たり「私にも一定の責任がある」とコメントしたが、関与を認めた理由は示さなかった。辞職で終結せず、疑惑について自らしっかり説明するべきだ。
略式起訴は同意が必要で、3人とも事実関係を認めている。
今後は東京簡裁が略式命令を出し、罰金刑が確定すれば原則5年間、公民権が停止され、選挙に立候補できなくなる。
昨年6月に公選法違反罪で略式起訴された菅原一秀元経済産業相は、略式起訴前に議員辞職したことが考慮され、公民権停止期間が3年に短縮された。
今回、薗浦元議員が辞職し、検察の判断を受け入れたのは、菅原氏のケースを前例に停止期間の短縮を見越し、少しでも早い政界復帰を狙った可能性がある。
有権者に十分な説明もせずに、そうしたことをもくろんでいるとすればあまりに身勝手だ。
国会議員の不祥事が後を絶たず、政治の根幹である国民の信頼は揺れ続けている。
岸田文雄首相は政治不信の払拭を繰り返し訴えている。しかし政治資金問題が相次ぎ発覚した寺田稔前総務相が事実上の更迭に追い込まれ、秋葉賢也復興相も政治とカネを巡る問題が指摘されるなど、現実は乖離(かいり)している。
今回の問題で元議員の責任が問われるのは当然だが、それだけでは同じことが繰り返されかねない。国会は改めて政治資金制度の問題点を検証し、見直しに向けた議論を始めるべきだ。
