平和と民主主義を揺るがす大きな出来事が起きた1年だった。年を越すに当たり、これまで当然のように享受してきた平和と民主主義の尊さを、改めてかみしめたい。
ロシアが2月にウクライナを軍事侵攻した。豊かな穀倉地帯がじゅうりんされてから10カ月が過ぎた。
多くの人が愛する人や家屋を失い故郷を追われた。虐殺や拷問など非道な行為もあった。
今も攻撃が続いている。電力供給がままならない厳寒の中を過ごしている人がいると思うと、心が痛む。
国連をはじめとした国際社会はロシアの暴挙をいまだに止めることができていない。
自国を守り、平和に暮らしていくとはどういうことか。私たち日本国民も身につまされた。
国内に目を向けると7月に、参院選遊説中の安倍晋三元首相が銃撃され死亡した。
民主主義の根幹である選挙活動中の凶行だ。自由な言論を封殺する暴挙は決して許されず、二度とあってはならない。
背景を探ると、容疑者の動機から、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治の接点を巡る問題が明らかになった。
教団への多額の献金によって家庭が崩壊するなど、深刻な被害に苦しむ人たちがいた。救済し人権を守らねばならない。
当たり前が揺らいで、危機感が増幅する中で、新たな変化が生じた。
◆大転換した安保政策
政府は安全保障政策を大きく転換させ、戦後の歴代政権があえて持たなかった反撃能力(敵基地攻撃能力)保有に動いた。
背景には、中国の軍事的台頭や北朝鮮の度重なるミサイル発射がある。ウクライナへの侵攻も軍事的な緊張をリアルに感じさせた。
しかし、反撃能力は攻撃対象やタイミングに曖昧さが残る。一歩間違えれば、先制攻撃となり国際法違反の恐れがある。
岸田文雄首相は専守防衛は基本的な方針であり、今後も変わらないとしたが、憲法9条に基づくその理念が、大きく揺らいでいくのではなかろうか。
戦禍を知らない世代が国民のほとんどを占めるようになった。将来、2022年が「いつか来た道への転換の年だった」と言われてはならない。
ウクライナ侵攻による世界的なエネルギー危機に伴い、政府は原発を最大限活用する方針に切り替えた。
11年の東京電力福島第1原発事故以来掲げてきた「原発の依存度低減」を転換し、60年を超える長期運転を認め、次世代型原発への建て替えを促す。
新制度では、原子力規制委員会の審査に合格していない原発で最も古い東電柏崎刈羽原発1号機も、再稼働の対象になる。
県民にとって位置付けが重い原発問題や安保政策が十分な議論がなく変わった。国民の声が反映されていたとは思えない。
民主主義が揺らぎかねない。
◆諦めない姿勢貫こう
新型コロナウイルスは、年明けには感染拡大から丸3年になるが、依然収束の兆しが見えない。夏に流行した第7波では、1日の新規感染者数が全国で過去最多の26万人超となった。
冬に入り、新規感染者数は再び増加傾向に転じ、第8波が収まらないまま年を越す。
マスクを着けない生活が遠い昔と思える一方、重症化率や致死率が低下し、社会経済活動と両立する動きが鮮明になった。
イベントも復活し、地域に活気が戻りつつある。海外からの観光客も戻ってきた。
とはいえ、ウイルス禍に加え、円安による物価高で生活が困窮している家庭もある。
支援を必要とする人への目配りは欠かせない。
スポーツでは今年も県勢から大きな勇気と力をもらった。
冬の北京五輪では、本県の平野歩夢選手がスノーボードで見事に金メダルを獲得した。
サッカーのアルビレックス新潟はJ2リーグで優勝、6季ぶりのJ1昇格を決めた。
バスケットボール全国高校選手権で男子の開志国際が、県勢初の頂点に立った。
サッカー・ワールドカップ(W杯)で、日本は8強入りを逃したが、最後まで諦めない戦いぶりは国民の共感を呼んだ。
諦めることなく挑戦する姿勢は、何事にも大事なことだ。
私たち一人一人も下を向くことなく、粘り強く一歩一歩を刻んでいこう。