新しい年が幕を開けた。平和な1年であってほしいと誰もが願うことだろう。

 夢や希望はかなえるためにある。そのためには私たちの立ち位置を確認しておきたい。

 昨年はロシアがウクライナに侵攻し、日本の安全保障政策も大きく変わった。転換期を迎えた、後世の歴史家は振り返ってそう見るかもしれない。

 「あの時こうすればよかった」と後悔しないようにしたい。転換する歴史の激流に流されず、一歩踏み込んで局面打開へと能動的に飛び出したい。

 ◆新潟の魅力売り込め

 新型コロナウイルスの感染流行が4年目に入る。

 感染者数は高止まりし、医療機関の重い負担は続く。だが社会がウイルスと共存する「ウィズコロナ」は浸透してきた。

 ウイルス禍に円安、物価高騰が重なり、街や村が悲鳴を上げている。十分な感染対策を前提に、社会経済活動を進めていかねば立ちゆかない段階だ。

 そんな中で、期待したい動きが見えてきた。

 新潟空港の国際線が今月、2年10カ月ぶりに再開する。台湾・台北線で多くの訪日観光客が早速、スキー場や温泉地を訪れるだろう。

 3月には国際クルーズ船が本県に寄港する。4月以降は大型船の入港も予定される。

 円安はマイナスの影響だけではない。増える訪日観光客の消費意欲を刺激するべきだ。受け入れ体制をしっかり整えたい。

 5月に新潟市で開かれる先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議も、世界に発信する大きなチャンスに違いない。

 豊かな自然や食材、確かなものづくり技術など新潟ならではの素材を売り込みたい。外国から訪れてもらうには、魅力をなお一層磨く必要がある。

 政府が昨年、農林水産物の輸出重点品目に「錦鯉」を追加した。錦鯉輸出の半分を占める本県産への期待は大きい。

 日本酒、コメとともに新潟を代表する特産品だ。世界に誇りうる新潟ブランドを掘り出して成長させようではないか。

 来年の世界文化遺産登録を目指す「佐渡島(さど)の金山」を巡り、推薦書を再提出する政府の対応が正念場を迎えている。

 背景には、戦時中に朝鮮人が鉱山で強制労働をさせられていたとして、韓国が登録に反発していることがある。

 戦後78年になろうとも歴史認識の溝が埋まらない。侵略された側には消えない痛みがあることを肝に銘じたい。

 政府は県や佐渡市と情報を共有しながら、もつれた糸をほぐすように課題を一つずつ、丁寧に解決していくしかない。

 政治に目を転じれば、昨年末は安全保障や原発などの重要政策の転換が相次いだ。先の戦争や東京電力福島第1原発事故の反省を踏まえていたはずだ。

 周辺国の軍事的な脅威や電力不足、脱炭素化の流れは理解できるが、軽すぎる決断ではなかったか。熟慮して丁寧に議論を重ねる慎重さが求められる。

 ◆生活者本位の政策を

 今年は金融政策の転換も気がかりだ。日銀は昨年末に長期金利を事実上利上げし、10年続いた金融緩和からの「出口」への布石との見方が広がった。

 岸田文雄首相の経済政策「新しい資本主義」は国民の生活本位で遂行してもらいたい。

 この30年ほぼ横ばいの平均賃金を上げ、貧困をなくして格差を解消するためにも「聞く力」を発揮する時だ。

 私たちも自らの意思を選挙の投票で示し、棄権することなくきちんと伝える義務がある。民主主義とは国民と政治の意思疎通により育むものだ。

 国を挙げて最優先で取り組みたいのは、予測より8年も早く進む少子化への対応だろう。

 4月には「こども家庭庁」がスタートする。関連施策を総合的に推進して明るい未来を築けるか、期待は大きい。

 少子化対策の成果が出るには25年かかるとされる。先を見据えた長い目で考え、速やかに行動を起こさねば間に合わない。