新規感染者数は依然多い状態が続いている一方で、重症化率は以前より低い。社会経済活動の回復が求められる中で、どのような位置付けが今後の社会に適しているのか。知見を生かして慎重に判断しなくてはならない。

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けについて、政府は3~4月をめどに季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げる方向で検討している。

 新型ウイルスは現在、感染症法上で危険度が2番目に高い「2類」より幅広い措置を取ることができる「新型インフルエンザ等感染症」の位置付けで、感染者の就業制限や濃厚接触者の外出制限などを義務付けている。

 5類になると感染者の隔離や濃厚接触者の制限はなくなり、行政は入院勧告などができなくなる。

 引き下げの検討は、重症化率や致死率の低下が背景にある。

 しかし、流行「第8波」は高止まりし、正月休みが明けてからは1日当たりの新規感染者数が再び20万人を超える日もある。

 インフルも昨年末に流行入りした。同時流行により医療現場が逼迫(ひっぱく)する事態は避けねばならず、まだまだ油断はできない。

 政府の検討に対し、厚生労働省にウイルス対策を助言する専門家組織メンバーらは、「必要な準備を進めながら段階的に移行すべきだ」とする見解案をまとめた。

 急な移行は社会に混乱をもたらす恐れがある。感染状況や経過を見ながら、段階的に見直していくとの指摘はもっともだ。

 厚労省も、入院費や医療費は5類だと原則自己負担だが、診療控えが出ることを考慮して、公費負担を経過措置として継続する方向で検討している。

 ワクチンについても、これまで通り公費負担で接種できるかどうか議論を進めてもらいたい。

 5類になると強制的な措置が取れなくなり、行政が入院調整をする根拠がなくなる。このため見解案は、感染者が増えた場合に備え「医療逼迫時の調整機能を維持する必要がある」と指摘している。

 感染者や死者が激増する場合には接触機会を減らす対策を考慮することも求めている。

 感染拡大から丸3年になるとはいえ、ウイルスは依然として未知の部分が多い。感染力が強い変異株が発生した場合などに、どう対策を講じるかは難しい問題だ。

 中国では、ゼロコロナ政策を緩和して以降、各地で感染者が爆発的に増えている。感染者数の増加により、新たな変異株が発生する恐れも指摘されている。

 政府は昨年末から行っていた中国からの渡航者全員への水際対策を8日に強化したが、春節を控え今後さらに多くの観光客が入国するとみられる。

 世界の感染状況の変化にも注意を払っていかねばならない。