世界一を誇った中国の人口が減少に転じた。出生数は6年連続で前年割れし少子高齢化が進む。労働人口(16~59歳)も前年から減少し、豊富な労働力で世界2位の経済大国に急成長したかつての活力は失われつつある。

 日本にとって最大の貿易相手国だ。日本経済にどのような影響を与えるか注視せねばならない。

 中国国家統計局は、2022年末の中国の総人口(台湾や香港、マカオを除く)が前年末と比べ85万人減り、14億1175万人になったと発表した。

 減少は1961年以来61年ぶりという。国連によるインドの推計人口14億1200万人を下回り、世界首位の人口大国の座から陥落した可能性がある。

 人口減少は、79年から2016年まで続けられた「一人っ子政策」の影響が大きい。

 その後、政府や自治体は出産や育児への支援策を次々と打ち出したものの、多様な価値観を持つ若い世代には響いていない。

 13年に結婚したカップルは1347万組だったが、21年は764万組と大きく減った。22年の出生数は建国翌年の1950年以来、初めて1千万人を割った。

 高齢化も進んでいる。65歳以上が総人口に占める割合は22年末に14・9%で、「高齢社会」の基準値を上回った。

 年金や医療保険といった社会保障を充実させねばならない。しかし、経済減速に伴い豊富な税収が期待できなくなっている。

 22年の国内総生産(GDP、速報値)は前年比3・0%増で、政府目標を下回った。新型コロナウイルス感染を抑え込む「ゼロコロナ政策」のためとされるが、中国での目標未達成は極めて異例だ。

 習近平指導部が、格差を是正し全ての人が豊かになる「共同富裕」を掲げる一方で、豊かな先進国になる前に高齢化が進行する「未富先老」が現実味を帯びてきた。

 事態打開には大胆な経済政策の転換が求められる。非効率な国有企業より民間企業を重視し経済を活性化させる構造改革が必要だ。

 日本にとり中国は、米国を上回る貿易相手国で、日本市場が縮小する中、日系企業の収益を支えてきた。日系企業の拠点数は中国が最多で3万を超える。

 人口は減っても当面は重要市場であり続ける見方がある。だが、先行きは不透明感が漂っている。

 若くて安い労働力が魅力だったが、人件費は上昇している。労働人口減少に伴って採用難も顕在化している。

 日本貿易振興機構が昨年実施したアンケートでは、中国に進出する日系企業のうち、今後1~2年に現地で事業拡大するのは3割超と過去最低だった。

 日本企業の中国に対する見方に変化が見え始めている。将来を見据えた戦略が必要だ。