「合憲」の判断が示されても、最大2倍になる「1票の格差」は人口の動向によって、今後も拡大する可能性が残る。

 人口と地域というそれぞれの観点から、これからの時代にふさわしい仕組みをつくる必要がある。国会はこれでよしとせず、見直す努力を怠らないでもらいたい。

 「1票の格差」が最大2・08倍だった2021年の衆院選が違憲かどうかが争われた訴訟16件の上告審判決で、最高裁大法廷が「合憲」との判断を示した。

 格差が1・98倍だった17年選挙に続いて、2回連続の合憲判断となった。これまでの最高裁判決は2・13~2・43倍だった09、12、14年の選挙をいずれも「違憲状態」と判断し、是正を求めた。

 17年より格差が拡大した21年選挙を合憲と判断したのは、格差是正に向けて選挙制度を改めた国会の取り組みを評価したからだ。

 人口比を反映しやすいとされる議席配分方法「アダムズ方式」を16年に導入したことを重視した。この方式で小選挙区定数「10増10減」が算出された。

 国勢調査ごとに格差が2倍未満となるよう見直す制度も設けられ、判決は「制度的な枠組みで是正される」と評価した。

 この新たな仕組みで選挙が行われる限り、提訴されても同様の判断が示される可能性が高い。

 全国一斉提訴が始まって13年余り、厳しい司法判断と国会による格差是正が繰り返されてきた。一連の「1票の格差」訴訟は節目を迎えたことになる。

 とはいえ、現状にお墨付きを与えた「合憲」ではないことは心しておくべきだろう。

 裁判官15人中1人は、反対意見で「1票の格差がない状態をデフォルト(初期設定)として制度設計しなければならない」と主張、「違憲」だとした。

 原告の弁護士グループは「国民主権の根幹の選挙制度がゆがんでいる」と国会に注文を付けた。

 数的な格差是正の観点だけでなく、見直すべき点は多々ある。

 地方の人口減がさらに進めば格差が2倍を超え、選挙区などが再び見直されれば、有権者の混乱を招きかねない。

 地方で減った議席は人口の多い都市部に回り、過疎化の進む地方の声が国政に反映されにくくなる。新たな制度に対して地方の抵抗感が根強いのは当然のことだ。

 「10増10減」で本県の小選挙区は6から5に減った。比例代表ブロックも「3増3減」となり、北陸信越は1減となった。

 国会は「1票の格差是正」と「地方の民意反映」という二律背反の難題を突き付けられている。

 与野党は昨年、公選法改正案審議時の付帯決議で、地域の実情を踏まえた区割りの在り方などを抜本的に検討すると明記した。約束を忘れないでもらいたい。