感染拡大のリスクがなくなったわけではない。政府や自治体、医療機関などは感染状況を注視しながら、移行により何が変わるのか国民に周知徹底し、混乱が生じないよう準備を進めてもらいたい。

 政府は27日、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを、5月8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げることを決定した。

 2類よりも幅広い措置が可能な現在の「新型インフルエンザ等感染症」の位置付けより緩和する。

 移行日を5月8日としたのは、大型連休が終わり、人の往来が落ち着くのを見越したためだ。

 5類になると感染者と濃厚接触者の外出自粛要請はなくなる。

 医療費について政府は、一定の自己負担を求め、個人負担が急激に増えないよう公費支援を段階的に縮小する方向だ。

 受診できる医療機関を段階的に拡大することも検討し、3月上旬をめどに具体的方針を示す。

 個人負担を伴うため、受診控えが起きないよう検討してほしい。

 特定の病院に集中せず、スムーズに患者を受け入ることができるような態勢も必要だ。

 忘れてはならないのは、新たな変異株が出現すれば、再び流行期に入る恐れがあることだ。

 厚生労働省の感染症部会は、新型ウイルスが国民の生命や健康に重大な影響を与える恐れがある状態とは考えられないとした一方、オミクロン株とは大きく病原性が異なる変異株が出現した場合は、対応を見直すよう求めている。

 5類では緊急事態宣言が出せなくなる。適切な対応が遅れ、医療現場を逼迫(ひっぱく)させる事態を招いてはならない。

 自治体による入院先の調整など5類ではできない対策は当面、続けられるように検討を求めたい。

 感染者が急増する事態が発生したら移行の延期も考えるべきだ。

 政府はマスク着用について、屋内外を問わず個人の判断に委ねる一方で、着用が効果的な場面を周知する方向で検討する。

 高齢者ら重症化リスクの高い人と会話する場合などは、着用するといった配慮も必要だろう。

 子どものマスク着用では、小中学校の卒業式に間に合わせるため、3月から着用を不要とする意見が自民党などから出ている。政府は早期に決めたいとしている。

 イベントの人数制限は事実上廃止し、5類移行を待たず27日から運用を開始した。マスクを着用すれば、満席の会場で大声を出し応援することが可能になった。

 ワクチン接種について、米国では年1回の定期接種にする案を、米食品医薬品局(FDA)が示した。日本も接種の在り方を検討し早急に示してもらいたい。

 新型ウイルスの収束は見通せない。5類になっても感染対策をなおざりにしてはならない。