地域の身近な見守り役である民生委員のなり手不足が深刻化している。住民へのサポートが手薄にならないか懸念が募る。

 国は自治体と連携して解決策を探り、活動を支える体制整備を急ぐべきだ。

 民生委員が昨年12月、全国一斉に改選され、定数約24万人に対する欠員が1万5千人余りに上った。欠員は以前から増加が続き、3年前の前回に比べ3割以上増え、戦後最多になったとみられる。

 本県は定数3502人に対し欠員が198人、新潟市は定数1375人に対し欠員87人だった。充足率は本県が都道府県で28番目に高い94・4%、新潟市は政令市で9番目に高い93・7%だった。

 民生委員は、独居高齢者らを訪問したり、ひきこもりや児童虐待に関する相談を受けたりして、行政との橋渡し役を務める。地域には欠かせない存在となっている。

 任期は3年(再任も可)で、一定の活動費は交付されるが、無報酬だ。町内会などが住民から候補者を選び、都道府県知事などの推薦を踏まえて厚生労働相が委嘱する。定年退職した人や専業主婦らが務めることが多い。

 欠員の要因には、民生委員自体の高齢化や、働くシニア層の増加、専業主婦の減少が指摘される。

 最近は、住民の孤立化など地域が抱える課題も複雑になり、業務負担が重くなっている。一方で、民生委員の役割や活動などの認知度は低く、こうした点もなり手不足に影響しているとみられる。

 自治体の担当者からは「このままでは民生委員の制度は破綻するのではないか」といった切実な声が出ている。危機感を持って対策を講じねばならない。

 独自の施策を取り入れ、試行錯誤している自治体もある。

 石川県野々市市では、民生委員が働きながら活動しやすくなるよう、タブレット端末が貸与された。オンラインで会議に参加できるようにした。

 神戸市は昨年、担い手の裾野を広げようと、市内の大学生に民生委員の活動を体験してもらう試みを実施した。地道に理解を広げることは大切だ。

 地域が候補者を探す方式に限界があるとの声も根強い。行政のより積極的な関与が必要だろう。

 識者からは「民生委員が弁護士や精神科医といった専門家の支援を得られるよう、行政が責任を持ってバックアップ体制をつくるべきだ」との指摘もある。

 民生委員の欠員について加藤勝信厚労相は「強い問題意識を持っている」と述べ、人材確保策を幅広く検討するとした。地域の声をしっかり聞き、手厚い支援を講じることが求められる。

 多くの民生委員は、地域を支える役割に誇りとやりがいを持っている。その思いを受け止め、制度を安定的に継続させたい。