市民への弾圧をいつまで続けるのか。民主派との武力闘争で多くの犠牲者が出ている。
日本をはじめ国際社会は一体となり、公正な選挙の実施と民主派指導者の解放に向け軍事政権へ圧力をかけ続けることが必要だ。
ミャンマー国軍が2021年2月1日に事実上の国家元首だった民主派指導者アウンサンスーチー氏を拘束し、政権を転覆させたクーデターから2年が過ぎた。
軍事政権は1日、解除期限の非常事態宣言を半年延長すると発表し、8月1日までに実施するとしてきた総選挙も先送りになる可能性が強まった。
民政復帰の道が遠のいたことを深く憂慮する。
軍政は非常事態宣言の延長に際し、民主派が「国家権力を奪おうとしている」としていたが、あまりにも独善的な主張だ。
宣言延長は、民主派勢力の武力闘争が効果を上げ、軍政ペースの選挙に向けた治安維持に不安を覚えているためだろう。
民主派は国軍に対抗するため「国民防衛隊」を結成し、全土で戦闘を起こしている。国土の6割を統治し、軍政が掌握できている地域は限定的だとしている。
これに対し、国軍は空爆を繰り返し、多くの一般市民が犠牲になっている。
ミャンマーの人権団体によると、クーデター後に国軍の弾圧により3千人近い市民が殺害された。拘束中の市民は1万3700人以上に上る。
軍政はスーチー氏が率いた国民民主連盟(NLD)を事実上非合法化し、着々と民主派の排除を進めてきた。
拘束されたスーチー氏は、汚職や国家機密漏えいなど計19件で訴追された。全て有罪になり、懲役と禁錮を合わせ計33年の刑期を言い渡され、解放の見込みは薄い。
裁判所は国軍の統制下にあり、一貫して非公開で行われた。とても公正な裁判とは認められない。
残念なのは、軍政に圧力をかけるべき国際社会が、一体となり切れていないことだ。
国連安全保障理事会は昨年12月、スーチー氏らの解放を要求する決議案を採択したが、中国とロシア、インドが棄権した。
東南アジア諸国連合はミャンマー情勢を議論する臨時外相級会合を開催したが、半数が欠席した。
日本はミャンマーへの政府開発援助(ODA)の在り方を、見直すべきだ。
日本はクーデター後、新規のODAは停止したが、既存の案件は継続中で、欧米が経済制裁を科しているのとは一線を画している。
曖昧な対応では、「日本は国軍寄り」との印象をミャンマー国民や国際社会に与えかねない。
日本は今年、先進7カ国(G7)議長国だ。国際社会をまとめるよう努力してもらいたい。