重たい雪に押しつぶされそうな空き家は、人口減少社会を映す光景といえる。

 強い寒波に見舞われた今冬は、地域の断水を引き起こす一因としても懸念が高まった。撤去や有効活用に向けた対策のスピードを上げていく必要がある。

 管理が不適切な空き家の急増を受けて対策を定めた特別措置法が全面施行から8年たち、政府は今国会に改正案を提出する。現行の対策では手詰まりなためだ。

 国土交通省の試算では、2018年時点で349万戸だった長期不在の空き家は、25年に420万戸に増えるとみられる。これに対して15~21年度に撤去などが済んだのは14万3千件に過ぎない。

 住まいに愛着があり処分に踏み切れない人もいるのだろう。しかし見過ごせない問題がある。

 放置すれば屋根や壁が落下する危険があるほか、防犯や景観への悪影響も考えられる。

 新潟市で1月に実施直前で回避された計画断水でも、背景に空き家問題が挙げられた。

 水道管が凍結して破裂しても気づかれにくく、大量の水漏れが地域の断水を招きかねない。帰省する正月やお盆のためだけに水道契約を続けている住宅での漏水事例が報告されている。

 政府は、管理が不十分な空き家を税の軽減対象から外し、事実上の増税とすることで所有者に対応を促す案などを検討している。

 通行人を巻き込むような倒壊は防がなければならない。

 現行でも倒壊の恐れがあれば指導、勧告、命令を経て自治体が「代執行」で撤去することができる。改正案では、一部の手続きを省き円滑に撤去できるようにする。

 個人の財産は慎重に扱われるべきだが、台風や地震による損壊が心配される場合には、迅速な対処が求められる。

 撤去は費用負担が重いことから、解体せずに利用していく仕組みも整えるべきだ。

 法改正では、活用を重点的に進める「促進区域」を市町村が設定し、カフェや宿泊施設へ転用しやすくする案が浮上している。

 店舗需要がある地域は限られ、万能の空き家対策とは言い難い。しかし、危険な放置を減らすにはこうした活用策を積み上げていかざるを得ない。

 人が集う拠点として生まれ変わらせることができれば、地域の活力につながる。

 放置されて年月がたつほどに建物は壊れ、活用に向かなくなる。老朽化する前に早く手を打つことが肝心だ。

 地方によっては、空き家を調べて対策を講じるだけのマンパワーがないといった行政側の課題も聞こえてくる。

 民間の力をうまく取り込みたい。無用な規制が活用を阻んでいないか、官民で議論してほしい。