副主将としてチームをけん引し、後輩に目配りしてきた人らしいコメントだった。「箱根駅伝ではいい結果を残せなかったので後輩たちに『やったぞ』と見せたくて」。正月の箱根は区間8位。連覇を逃した悔しさもぶつけた

▼五泉市出身で青山学院大4年の横田俊吾選手が、先日の別府大分毎日マラソンで20年ぶりに日本学生記録を更新した。終盤も粘り、学生初の2時間7分台で駆け抜けた。パリ五輪選考会のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)出場権も手にした

▼努力を怠らない姿勢を周囲は評価する。山王中(現村松桜中)時代は夜も自宅近くの400メートルトラックで走り込んだ。大学では最終学年になるまで箱根に出られなくても腐らず、鍛錬を重ねた「苦労人」だ

▼大学の妙高市合宿では先頭で山道を走った。昨年9月にはマラソンへの強い思いを口にしていた。初挑戦した前回の別府大分を振り返り「自分が戦うのはここだな、と直感で思った」。距離が長いほど力を発揮できる-。適性は本人が一番分かっていた

▼卓球のラケットを振るような独特の腕振りで「よこたっきゅう」の愛称で親しまれる。来月新潟市で開かれる新潟ハーフマラソンに、予定通り出場すれば勇姿が見られる

▼今回の別府大分の中継で解説を担当した瀬古利彦さんや十日町市出身の服部勇馬選手ら、箱根路での経験を糧に世界へ飛躍した選手は多い。今後は実業団で研さんを積むが、また何かやってくれそうな予感を抱かせる快走劇だった。

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