さらなる失態は許されない。新たな経営陣に求められるのは企業風土を根本から変え、改革を実行して失われた信頼を取り戻すことだ。
みずほフィナンシャルグループ(FG)はシステム障害の頻発を受けた業務改善計画を金融庁に提出し、引責辞任する坂井辰史社長の後任に木原正裕執行役を充てる新体制を発表した。
社長交代は4月1日付の予定だったが、坂井氏が体調不良のため2月1日付に前倒しした。会長と傘下のみずほ銀行の頭取は4月1日付で交代し、グループ3首脳が刷新される。
最優先すべき課題は、システムの安定稼働だ。
みずほ銀では現金自動預払機(ATM)が停止しキャッシュカードが戻らなくなるなどのシステム障害が続き、昨年2月から今月までに10回を数えた。
昨年11月に金融庁から業務改善命令を受けながら、年末年始には他行宛ての振り込みができないなどの不具合も生じた。
背景で指摘されるのは、利益の底上げに向けた構造改革のために、システムの人員や維持費を削ったことだ。
昨年6月にはシステムメーカー出身者の幹部登用などを掲げた再発防止策を公表したが、問題の解決には至らなかった。
今回、金融庁に提出した業務改善計画では、安定的なシステム稼働に必要な要員を確保し、障害の風化を防ぐ研修の実施などを盛り込んだ。
トラブル発生で顧客に与える影響の大きさを踏まえれば、安定稼働に必要な要員を安易に削減できないことは明らかだ。教訓を生かしてもらいたい。
極めて重い課題となるのは、金融庁が業務改善命令で障害頻発の背景として指摘した「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」という企業風土を、新経営陣がどう変えていくのかだ。
企業風土の変革に向けては、経営陣と社員の座談会や、社員が経営陣に直接意見を伝える仕組みなどを設ける。
新経営陣は古い体質と決別し、現場の声を吸い上げて組織を再建してほしい。システム障害の本質は人の問題に帰結することをしっかり肝に銘じたい。
新社長となる木原氏は、社内会議でも忖度(そんたく)せずに発言するなど目立つ存在だという。記者会見では「社員の自律的で建設的な発言や行動を歓迎する組織にする」と述べた。
言葉通りの抜本的な改革となるか、手腕に注目したい。
気になるのは、合併前の旧日本興業銀行、旧第一勧業銀行、旧富士銀行の旧3行出身者が、新経営陣のポストを分け合う形になったことだ。
新体制を検討した指名委員会は人物本位で選んだと強調するが、こうしたバランス人事はこれまでも一体感のなさの象徴として問題視されてきた。
それだけに、新経営陣には強い危機感が不可欠だ。顧客の目線に立ち、業務運営を立て直して信用される組織となるか。問われるのは実行力だ。
