深刻な少子化に歯止めをかけたい。その意気込みがうかがえる予算案となった。
本県が安心して産み育てられる地域として選ばれるには、さらなる環境整備と情報発信が欠かせない。県は市町村や民間と連携し、一層力を注いでもらいたい。
県は15日、2023年度当初予算案を発表した。一般会計は1兆3429億円で、22年度当初に比べ133億円の減額となった。
国の予算編成方針に合わせた22年度2月補正予算案との一体編成で、規模は計1兆4138億円、前年度比3・3%減だった。
予算案の最大の特徴は、重点的な取り組みに「子育て環境の整備」を追加した点だ。従来からの重点である「脱炭素」「デジタル化」「分散型社会」と並ぶ四本目の柱に位置付けた。
10億円の基金を創設して金融機関とタイアップし、出生時に子ども名義の定期預金に10万円を給付する事業を始める。都道府県では初の取り組みとして注目される。
定期預金は、幼稚園や保育園の入園前と、小学校入学前に当たる時期にそれぞれ5万円が満期となる。妊娠と出生の届け時に各5万円を給付する国の出産・子育て応援交付金に続き、切れ目のない支援を目指す。
花角英世知事は記者会見で「金融機関と連携する一工夫を入れることで、社会全体で子育てを応援するという強いメッセージを込めた」と説明した。
子育て全体にかかる費用からすれば金額は大きくはないが、手法にはインパクトがある。
定期預金の事業をきっかけに、手厚い保育士配置など子育てに優しい環境づくりに本県が力を入れていることを、県内外に広く知ってもらうべきだろう。
県は発信力を磨き、若い世代に確実に情報を届けてほしい。
本県の出生数は21年に1万2608人と過去最少を更新した。22の総務省人口移動報告では、本県は転出者が転入者を上回る超過数が全国で4番目に多かった。
出生数の向上には、進学や就職などをきっかけに県外に流出した若い世代が戻ってくる環境を整えることが急務だ。U、Iターンを加速させるために、デジタル化の取り組みや働く環境の整備には特に力を入れてほしい。
県民生活にとっては、物価高や大雨災害など喫緊の課題への対応も引き続き重要だ。困窮する人を取りこぼすことがないように、きめ細かな目配りを求めたい。
県財政は、歳出が歳入を上回る事実上の「赤字」状態が続いていたが、22年度に続き、23年度も収支が均衡する見通しだ。行財政改革には一定の成果が見えた。
ただ県債残高が多い本県は、金利上昇の影響を受けやすく、油断はできない。財政運営の緩みにはなお警戒が必要だ。