2期目最初の当初予算案には、きめ細かく目配りした事業が並んだ。トップの判断で選挙公約を反映させた以上、成果をしっかり出せるかどうか厳しい目が向けられる。市長の手腕が問われる。
新潟市は2023年度当初予算案を発表した。一般会計の総額は3977億円、22年度当初比1・4%、55億円の増となった。
増額は2年連続で、規模は過去最高だった17年度を上回った。
予算案は「活力向上」「子育て」「区づくり」の3本柱で、これらの施策事業を通して「選ばれる都市」の実現を目指す。
記者会見で、中原八一市長は「庁内で議論を重ね、選挙公約など私の思ったことはおおむね反映された」と自信を見せた。
1期目の予算編成は「カラーが見えない」「総花的だ」と指摘されてきた。23年度は特徴を前面に打ち出したといえるだろう。
公約実現の目玉事業は「妊娠・出産・子育て3施策」だ。
妊産婦医療費助成の所得制限を撤廃し、対象が年間約4500人の全妊産婦に広がる。県内20市のうち15市で既に実施しているが、人口規模が大きい政令市では全国で初めてとなる。
産後ケア利用料金の引き下げ、第3子以降の保育料軽減の拡充と合わせ計6億8千万円を盛った。
いずれも単年度ではなく、24年度以降も継続が見込まれる。国の補助はわずかで、大半は一般財源で賄われ、財政面の影響は大きい。財政の豊かさを示す市の財政力指数は政令市最低で、裕福とはいえないからだ。
関係者が「市長が決断した」と指摘するように、市長がリードした施策で人口減の歯止めに実効性を示せるかを注目したい。
市長肝いりの施策で、新潟駅から古町地区までの都心部「にいがた2km(にきろ)」の街づくり関連事業は、22年度より5億円増の33億円を計上した。
首都圏などからの本社機能移転を支援するほか、百貨店「新潟三越」跡の再開発を後押しする。
都市の魅力が向上し、働く場があればU・Iターンが増え、地域経済に活力も取り戻せよう。攻めの姿勢を取り続けてもらいたい。
5月の先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、市を国内外に売り込むチャンスだろう。
注目された8行政区の予算・権限拡大について、市長は「市民の要望実現のために予算編成プロセスを変更した」と強調した。
区長の提案事業として5億円を計上し、区独自の課題を解決する道をつけた。住民要望の多い公共施設の小規模修繕などに充てる区の予算も増やした。
新潟市には他の県内29市町村をけん引する役割が求められる。市を停滞からどう脱却させるのか、全県が注視している。着実な取り組みが欠かせない。
