食欲をそそる言葉の一つに「秘伝のたれ」がある。とりわけ、うな重や焼き鳥が看板メニューの店では「継ぎ足しで、創業から伝わる」の売り文句も見掛ける。気が付けば、のれんをくぐっている
▼何十年と商いを続ける名店の証しである。身の脂やうま味が年月を経て溶け込んだ、たれの味が客を引きつける。サッカーJ1アルビレックス新潟もそんな持ち味を得ようと挑戦を続けているようだ
▼以前はブラジル人ら個人技に秀でた選手を中心にチームをつくっては、主力の移籍で再構築を迫られることを繰り返した。だが数年前からは、特定の選手に頼らずに組織的なパス回しで主導権を握るスタイルを志向するようになった
▼新たな取り組みは昨季、J2優勝という形で花開いた。2桁得点した選手はいなかった。一方でゴールを決めた選手は20人もいて、誰が出場しても質の高いサッカーを披露した。さながら食の名店のように、味わい深いプレースタイルが徐々に出来上がってきた
▼今季は主力がチームに残留した。築いたスタイルのさらなる積み上げを図る。もちろん、相手のレベルの上がるJ1では思うようにいかない試合も増えるだろう
▼それでも開幕に向けたキャンプの記事を読むと、選手やスタッフは真っ向勝負を挑む気持ちが強いように感じる。調整も順調のようだ。新加入の4選手がアクセントやスパイスとなり、国内最高峰の舞台にもまれながら、チームの持ち味をどう熟成させていくか。あすの開幕戦が楽しみだ。