県議会を代表する議長が不祥事で辞任し、議会に大きな傷を残した。由々しき事態だ。

 責任は、議長に送り出した自民党県議団にもあるはずだ。適切な人選といえたのか、十分に省みてもらいたい。

 自民党の小島隆県議会議長が20日、議長を辞任し、離党した。政務活動費の一部をだまし取ったとして詐欺の疑いで県警に書類送検されたことを踏まえたものだ。

 県議会議長が書類送検されるのは異例だ。議長の座にとどまれば、2月定例会が空転し、2023年度県予算案の審議に影響する恐れがあった。辞任は当然だ。

 小島氏は、虚偽の内容を記した収支報告書などを県議会事務局に提出し、15~17年度分の政活費計約120万円をだまし取った疑いが持たれている。

 書類送検については「関係者からの聴取などには真摯(しんし)に対応する」と述べた。

 だが聴取に応じるだけでは不十分だ。小島氏は、20年12月に当時の秘書の給料に関して政活費をだまし取ったとして刑事告発された際も、21年2月に県警が受理した際も、「コメントできない」などとして詳しく語らなかった。

 税金で賄われる政活費の使途に疑義がある以上、有権者の負託を受けた議員として、県民にしっかり説明してもらいたい。

 県議会の議長は長年、最大会派の自民党が務めている。法的な任期は4年だが、慣例として1年で交代し、当選回数や年齢に応じて党内で順送りしてきた。

 議長ポストを巡って会派を割らないための融和策で、事実上の党内人事といえるだろう。

 しかし小島氏が順送りで議長に就くことには、党内にも疑問視する向きがあったという。

 22年8月に議長に就任する時点で、既に県警が刑事告発を受理しており、秘書給与の返還を求める訴訟も起こされていたためだ。

 それでも擁立したのは「訴えられているだけで議長になれないという先例をつくるわけにはいかない」ことが理由だった。

 捜査結果が出ていない段階だったとはいえ、結果的に半年で議長辞任に追い込まれた。今回の事態を自民は重く受け止め、人物本位の人選を心がけるべきだ。

 県議会を巡っては、元自民党県連会長で現在は無所属の星野伊佐夫県議から「裏金」を要求されたと泉田裕彦衆院議員(比例北陸信越)が主張し、星野氏が公選法違反の疑いで書類送検された。

 星野氏と小島氏は4月投開票の県議選には出馬せず、引退する意向を示している。疑念を抱えたまま幕を引くのであれば、政治家として誠実だとは言い難い。

 後を絶たない「政治とカネ」の問題に有権者の厳しい視線が注がれている。そのことを県議会は深刻に考えなければならない。