平和と安全を脅かすミサイル発射を断じて許すことはできない。予期せぬ衝突を防ぐため日本をはじめ国際社会は、挑発をやめさせるよう結束しなくてはならない。

 北朝鮮が18日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)1発を平壌近郊から発射した。約66分間飛行し、北海道渡島大島の西方約200キロの排他的経済水域(EEZ)内に落下したと推定される。

 北朝鮮はミサイルは「火星15」だとし、2017年にICBM級ミサイル実験を開始して以降初めて訓練で発射したと表明し、実戦配備できることをアピールした。

 ICBMの発射は昨年11月の「火星17」以来になる。日本の防衛省は、火星15と17は米全土を狙える射程を持つとみている。

 20日には韓国攻撃用の短距離弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射した。

 北朝鮮は17日に「今年に入り、軍事行動は自制している」としていたが、一転し緊張が高まった。

 米韓は大規模な軍事演習を3月中旬に実施することから、ミサイル発射は、これをけん制する狙いがあるとみられる。

 朝鮮中央通信は、米韓が19日に戦略爆撃機などを動員した合同空中訓練を行ったと非難した。

 金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記の妹、金与正(キムヨジョン)党副部長は「太平洋をわれわれの射撃場に活用する頻度は米軍の行動にかかっている」との談話を出した。

 日本列島を越える形の弾道ミサイル発射をちらつかせ挑発したのは、日米韓がいずれも核攻撃の射程圏にあることを強調する狙いがあるとみられる。

 国連安全保障理事会は緊急会合を開き対応を協議したが、中国とロシアは北朝鮮を擁護した。

 理由として、米国が韓国や日本と実施している軍事演習が緊張を高めているとした。

 拒否権を持つ中国とロシアが歩み寄らねば、北朝鮮に対して効果的な手は打てない。国連は結束する努力を続けるべきだ。

 火星15を発射した背景には、北朝鮮が米国との対話を模索する方針に転換し、交渉入りの圧力を加え交渉実現時の立場を強めようとしているとの見方もある。

 北朝鮮国内は深刻な食料難で餓死者が続出していると、韓国大統領府は指摘している。無益なミサイル開発より、対話を通し、安定した食料供給の道を探るべきだ。

 一方、日本の危機対応は不安が残った。20日のミサイル発射の際には、海上保安庁が発射を計3回発表した後に、防衛省が発射は2発だと公表した。

 昨秋には、全国瞬時警報システム(Jアラート)でミサイルが日本上空を通過したと速報し、後に訂正した。

 正確な情報収集は防衛の基本だ。国民の安全安心のため、政府は万全を期すべきだ。