いつまで非道な侵攻を続けるのか。厳冬の地で連日多くの市民や兵士が命を落としている現実に強い憤りを覚える。

 ロシアがウクライナに侵攻して24日で1年となる。終わりの見えない消耗戦は、両国だけでなく、世界の平和と繁栄を根底から揺さぶっている。

 国際社会は結束してウクライナを支え続けなければならない。ロシアに撤退を促す道筋を一刻も早く描き、和平実現の糸口を見いだしてもらいたい。

 ロシアのプーチン大統領は21日、連邦議会に対する年次報告演説で、軍事侵攻を改めて正当化するとともに侵攻を継続する姿勢を強調した。

 プーチン氏は、ロシア系住民が多いウクライナ東部と自国の平和を守るためだとして侵攻を始めた。昨年9月には東部と南部の4州をロシアの領土にしたと一方的に宣言した。

 国際社会の強い非難を無視し、隣国の主権を踏みにじる蛮行は決して容認できない。

 ◆戦争犯罪許されない

 ロシア国民の高い支持率もあり、プーチン氏が領土で主張を譲る見通しはない。専門家は近い将来に和平交渉が始まる可能性は非常に低いとみている。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は「領土問題で妥協すれば国が弱体化する」と訴え、領土が戻るまで戦う考えだ。

 ウクライナがロシアに屈することは、他の覇権主義国家の暴挙を許すことにも発展しかねない。そうならないためにも日本や米欧が中心となりウクライナを支援していく必要がある。

 戦況は泥沼化している。ロシア軍はミサイルなどで無差別攻撃し、発電所を含むインフラ施設を破壊してきた。

 これに対し、ウクライナ軍は米欧からの武器供与を受けて反撃し、一度制圧された領土を取り戻している。

 ロシアの戦争犯罪は目を覆いたくなる。多くのウクライナ市民が拷問を受け、虐殺された。国連によると、侵攻による民間人死者は8千人超に上る。

 攻撃を受けた街では、市民が寒さに凍えながらシェルターで暮らし、1300万人以上が国内外に避難した。

 ウクライナ軍だけでなく、ロシア軍の死傷者も甚大な数に上っている。

 米国のバイデン大統領が20日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を電撃訪問し、ゼレンスキー氏と会談したことは大きな注目を集めた。大統領のウクライナ入りは侵攻開始後初で、追加軍事支援などを表明した。

 侵攻後のエネルギー高騰や物価高などが影響し、米欧の国民には「支援疲れ」もある。こうした中で、バイデン氏は各国をリードして支援継続の姿勢を明確にした。

 ◆問われる日本の役割

 軍事支援を巡っては、ウクライナ側が強く求めていた戦車の供与にドイツが米国と歩調を合わせて踏み切った。第2次大戦の反省から紛争地域への武器輸出を厳格に管理してきただけに、大きな方針転換となった。

 ウクライナは戦闘機や長射程ミサイルの供与も要請しているが、ロシア領内への攻撃につながりかねず、戦闘のさらなる泥沼化を招く恐れがある。米欧が慎重姿勢なのは理解できる。

 見過ごせないのは、プーチン氏がバイデン政権を敵視し、米欧との対話のチャンネルを閉ざしていることだ。

 21日の演説では、米ロ間で唯一残された核軍縮合意、新戦略兵器削減条約(新START)の履行を停止すると表明した。戦略核を巡る世界情勢が不透明感を増す。由々しき事態だ。

 日本は先進7カ国(G7)の議長国で、国連安全保障理事会の非常任理事国でもある。どう役割を果たすかが問われる。

 岸田文雄首相は24日にG7首脳によるオンライン会議を議長国として開催し、ゼレンスキー氏を招くことを表明した。ウクライナ市民の生活再建やインフラ復旧に向け、新たに7千億円超の支援も行うとした。

 首相は5月のG7首脳会議(広島サミット)で存在感を示すため、事前のウクライナ訪問を模索しているという。

 G7で首脳がウクライナ入りしていないのは日本だけだが、秘密の保持や安全確保の面でハードルが高い。

 日本はウクライナへの人道的、経済的な支援を果たしつつ、中国やインドなどロシアの友好国も巻き込んで世界の結束を図る外交に尽力すべきだ。