まだまだ寒さは厳しくて山沿いは分厚い雪に覆われているけれど、2月も下旬となると、春の兆しを身の回りに探してしまう。木々の花芽が膨らんできたようだ。吹く風を少し優しく感じる時がある。郊外の田で餌をついばむ白鳥の数が少なくなった

▼立春はとうに過ぎて暦の上ではすっかり春である。それでも今時分の新潟は晩冬という方がしっくりくるように思える。冬将軍は依然として存在感がある。すぐ隣まで来ているはずの、春の日差しが待ち遠しい

▼「春隣」という言葉がある。春の訪れを待つ心を表す冬の季語だ。〈地を搏(う)つて雀(すずめ)あらそふ春隣〉堀口星眠。スズメたちが地面をたたくように羽ばたき、もつれ合っているのだろう。生き物も春に向けて活力を増している

▼季節は巡る。時の流れとともに春は必ず訪れる。なのに春の華やぎとは程遠い地もある。ウクライナはロシアの侵攻を受けて24日で1年になる。停戦の気配すら見えないまま、出口の見えない戦闘が続く

▼あまりに多くの血が流れた。民間の人間や施設に対しても国際法違反の攻撃が繰り返されている。むごく痛ましい事態が続く。影響は国際社会にも及ぶ。エネルギー価格や原材料の高騰に世界があえぐ

▼新たな冷戦も出現した。ロシアは新戦略兵器削減条約(新START)の履行停止を一方的に表明し、核による威嚇をいっそう鮮明にした。春の訪れは遠のくばかりに思えてしまう。だが嘆いてばかりはいられない。春をたぐり寄せる手だてを探らねば。

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