打ち上げの失敗は貴重な教訓になるはずだ。日本の技術陣は原因を徹底的に究明し、再び宇宙開発の最前線を目指してもらいたい。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業は7日、鹿児島県の種子島宇宙センターで新型主力機H3ロケット1号機を発射したが、離陸後に2段目エンジンが点火せず失敗した。

 任務を達成する見込みがなく、JAXAは地上からの信号で機体を破壊した。災害状況の把握などに用いる地球観測衛星だいち3号は軌道に投入できなかった。

 記者会見で、JAXAの山川宏理事長は国民の期待に沿えなかったことを謝罪し、「原因を究明し、早期に信頼を回復していくことが最優先の課題」だと述べた。

 最先端技術を結集したロケット開発は失敗を避けて通れない。究明した原因を速やかに公表し、新たな技術につなげてほしい。

 もともと1号機の発射は2020年度を目指していたが、主エンジンの開発が難航、不具合などで何度も延期されてきた。

 今年2月にも打ち上げを試みたが、カウントダウンが終わる直前に機器の誤作動による電気トラブルで発射を中断した。

 今回は2月の中断に続く失敗となる。日本の宇宙戦略はつまずき、大きな見直しが迫られそうだ。

 政府は今の主力機H2Aロケットで培った成功率97・8%の安心感を武器に、衛星打ち上げの受注拡大を狙っていた。国産ロケットの信頼回復が不可欠だ。

 H3は衛星の打ち上げ能力をH2Aの1・3倍に、市販部品を利用するなどしてコストは半分の約50億円にするという。コスト削減が先行し、十分な技術水準を確保できていたのか気がかりだ。

 昨年10月には小型ロケットイプシロンの発射にも失敗し、国産ロケットの打ち上げは18年ぶりに成功ゼロとなった。

 政府関係者は「かなり無理をして22年度中の発射を目指していたのは事実」と指摘する。

 半月余りで発射をやり直して急ぐ姿勢に無理はなかったか。技術者らを取り巻く作業環境も検証する必要があるだろう。

 成功すれば、H3は国際宇宙ステーションや月周回基地に物資を届ける新型無人補給機の打ち上げにも使う計画だ。日本の火星探査機を打ち上げる予定もある。

 H3に搭載したシステムを開発した長岡高専発のベンチャー企業メンバーは「この失敗には多くの学びがあった。次こそは成功すると信じている」と力を込めた。

 先月末には14年ぶりにJAXAの宇宙飛行士候補2人が決まった。米主導の月探査計画に加わり、月面での活躍も想定される。

 宇宙開発で日本の果たす役割は大きく、国民も期待している。そのためにはロケット技術を着実なものとしておきたい。