両手で何かを握って、ぐりぐりとひねるようなしぐさ。野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表が見せているパフォーマンス「ペッパー・グラインダー(こしょうひき)」である
▼その名の通り、こしょうの実をひいて粉にする道具を扱うしぐさだ。チームに持ち込んだのは日系大リーガーのヌートバー選手。所属するカージナルスで、このパフォーマンスを見せている
▼こしょうの実を「ひく」を意味する英語「グラインド」には「勉強などにこつこつ取り組む」という意味もある。ヌートバー選手はカージナルスで「こしょうひきのように粘り強くやろう」という話が出たことからこのパフォーマンスを始めたそうだ
▼こしょうを漢字で書くと「胡椒」。中国から来た言葉で「胡」は北方や西方の異民族のことだ。「椒」は「山椒」などにも使われるように香気と辛味があるものを指す。異文化の下で育ったヌートバー選手も明るい性格でファンの心をつかみ、日本代表にいい刺激を与えている
▼こしょうの香り成分は揮発性なので、楽しむにはひきたてがいいという。ペッパー・グラインダーの出番である。今後のWBCでもこのパフォーマンスで、ぴりりと引き締まったプレーを引き出してほしい
▼春は香りの季節かもしれない。冬に比べて風のにおいがやわらかいような。花が咲いたのだろうか。どこからか甘くて爽やかな香りが運ばれてきた。春の香りを探しつつ、気がつけば両手でぐりぐりやっていた。