有権者の負託を受けた国会議員の身分は重い。議員が資格を失えば、信任を裏切ることになる。

 だが議員としての実態がなく、重責を軽んじる姿勢を変えなかった以上、処分はやむを得ない。

 参院は、国会欠席を続け「議場での陳謝」の懲罰も拒否した政治家女子48党のガーシー議員に対し、最も重い「除名」の懲罰を科すことを決めた。

 現行憲法下で国会議員が除名されるのは過去に2例しかなく、72年ぶりとなる。国会欠席を主な理由とするのは初めてだ。

 ガーシー氏は「芸能界の裏側」を暴露するとしてユーチューブで人気を呼び、昨年7月の参院選に比例代表で出馬し初当選した。

 海外からインターネットなどを中心にした選挙活動で約28万8千票を集め、既成の政治に不満や閉塞(へいそく)感を抱く有権者の受け皿になったのではないかと注目された。

 だが当選後も帰国せず、国会出席を再三要請されても「不当逮捕の動きがある」などとして拒んだ。海外で活動することが公約だったと主張し、オンラインでの国会参加を求めるなど、登院しない理由ばかりを次々に挙げた。

 国会法は議員に対し、召集日に国会に集まる義務を課し、欠席が続けば懲罰委員会に付すとも規定している。オンライン出席を認める仕組みはない。

 ガーシー氏側の主張は、法律やルールを無視した身勝手な言い分に聞こえ、議員として責任を果たそうとする姿勢には見えない。

 現在のルールがおかしいと指摘するのなら、まずは登院して国会内で議論を深めるべきだった。

 ガーシー氏に対しては、複数の著名人がネットの動画投稿サイトで中傷、脅迫されたなどとして告訴し、1月には警視庁が暴力行為法違反や名誉毀損(きそん)、威力業務妨害などの疑いで、ガーシー氏の関係先を家宅捜索した。

 昨年末に事情聴取を要請された際にガーシー氏は、ネット上の動画で、帰国して聴取を受ける意向を示したものの、ほごにした。

 「議場での陳謝」の懲罰が決まった時も、帰国して陳謝に応じる方向で検討するとしていたが、それも実行しなかった。

 発言を守らないことも、国会議員としてふさわしくない。

 登院しない約7カ月半に満額支給された歳費や期末手当などは2千万円近くに上り、処分が遅いとの批判があった。

 一方、国会内では、多数派の横暴による少数政党弾圧を招きかねないとして、丁寧な対応を求める声が野党の中にあった。

 憲法は国会議員を、投票した有権者のみならず、「全国民を代表する」と位置付けている。

 その身分の重さを踏まえれば、処分の是非は、案件ごとに十分に議論され、慎重に判断されなくてはならない。