米ロ両国が直接戦火を交える事態に発展しかねない危険性が浮き彫りになった。対立を激化させないように両国は対話を重ね、冷静に対応してもらいたい。
米欧州軍は、ウクライナに面する黒海上空を飛行していた米軍無人偵察機MQ9が、ロシア軍のスホイ27戦闘機に衝突され損傷し、墜落したと明らかにした。
ロシアのウクライナ侵攻後、米ロ両軍機が衝突したのは初めてだ。偶発的な事態が交戦につながってはならない。
二度と起こさないために、米ロ両国はしっかり話し合うべきだ。
米国防総省などによると、偵察任務のためルーマニアから離陸したMQ9の近くを、2機のスホイ27が30~40分間飛行した。1機目が燃料を浴びせ、2機目がクリミア半島南西90キロの黒海上空で機体後部のプロペラに衝突した。
MQ9は部品が落下し、米軍がやむを得ず海上に墜落させた。
米側は「無謀な行為」と非難した。妨害は意図的だったとの見方を示し、ロシア政府最高レベルで承認されたとしている。衝突の映像も公開した。
一方ロシアは、米軍の偵察機が飛来したため戦闘機を発進させたが、武器は使用せず接触もしていないと発表した。偵察機の黒海上空の飛行は「挑発」と反発した。
米側は航空機の自由な飛行が認められている国際空域だと主張するのに対し、ロシアは、ロシア軍が黒海周辺に飛行制限区域を設けていることを米側は知りつつ無視したと批判している。
米国は、ウクライナ侵攻前から黒海上空でMQ9による偵察を行い、侵攻後はウクライナとの軍事情報の共有を強化した。
昨年4月にウクライナの攻撃でロシア黒海艦隊の旗艦モスクワが沈没したケースでは、米国がモスクワの位置を確認してウクライナ側に伝えていたと報じられた。
ウクライナのゼレンスキー大統領はクリミア半島の奪還を目指しており、ロシアは米軍がクリミア周辺で情報収集するのをこれ以上放置できなかったとみられる。
昨年9月には、スホイ27がパトロールしていた非武装の英空軍機の近くにミサイルを発射した。
ロシアがいかに神経をとがらせているかが分かる。
黒海上空が国際空域であることから、米側は飛行を続けることを明言している。
しかし周辺は、常に緊張状態にある。再び衝突が起きる恐れは否定できない。
オースティン米国防長官はロシアのジョイグ国防相と電話会談し、今後も意思疎通のため対話を継続する考えを示した。
侵攻が長期化し、ウクライナを支援する米国と、ロシアの対話の重要性は増している。
両国は対話を通じ、停戦への糸口を見いだしてほしい。
