リーマン・ショック以来となる世界的な金融危機の再来は防がねばならない。そのためスイスの政府が異例の後押しをした。

 世界の金融当局は協調して対応してもらいたい。政府・日銀も国内で金融不安を来さぬよう緊密に連携することが求められる。

 スイスの金融最大手UBSは19日、経営危機に陥った同2位のクレディ・スイスを30億スイスフラン(約4240億円)で買収すると発表した。事実上の救済合併だ。

 世界的な名門同士の大型再編となる。米シリコンバレー銀行(SVB)破綻に始まった信用不安が世界的な金融危機に発展するのを避けるため、15日の株価暴落から4日でスピード決着した。

 買収には政府とスイス国立銀行(中央銀行)が支援に動いた。スイス中銀は両社に多大な資金枠提供を表明、政府は特例措置の適用で合併実現に便宜を図った。

 米国では10日にSVBが、12日にシグネチャー銀行が破綻した。金融当局は信用不安に対応するため、両行の預金を全額保護する異例の対応を決めた。

 バイデン米大統領は議会に銀行への規制強化を要請すると表明した。「米国の銀行システムは安全であると保証する」と述べ、冷静な対応を呼びかけた。

 金融システムが機能不全に陥った2008年のリーマン・ショックを踏まえた両国の対応は、迅速だったと一定の評価はできる。

 米両行の破綻とクレディの経営問題は原因が異なるが、金融機関の危機が相次いで表面化したことで、世界で金融不安や経済の先行きへの懸念が高まっている。

 破綻ドミノへの不安から疑心暗鬼に陥った金融市場に、信頼を速やかに取り戻さねばならない。

 日銀や米連邦準備制度理事会(FRB)など6中銀は、20日から市場へのドル供給態勢を協調して拡充、金融機関のドル調達を支えて市場の混乱を抑える。

 新型ウイルス感染が拡大した20年3月以来の措置だ。国際協調の真価が問われよう。

 日銀は「グローバルな資金調達市場の緊張を緩和する重要な安全弁として機能する」と説明、企業融資や個人ローンなどを後押しする目的があるとした。

 注意したいのは、経営が脆弱(ぜいじゃく)な金融機関の問題が根本的に解決してはいないことだ。

 SVB破綻には、金融緩和を受けて資金運用で購入していた米国債などの価格が、FRBの利上げで下落、多額の含み損を抱えたことも背景にある。

 日本でも、地銀99行の外国債券と投資信託の運用状況は昨年末、約1兆5千億円もの含み損に膨らみ、急激に悪化している。

 金融市場の動揺が長引けば含み損が拡大するリスクがある。関係機関は市場の急変動に対応できる体制整備を急ぐ必要がある。