日本代表がきょう決勝を戦う野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で活躍する大谷翔平選手は、日本ハムを経由して大リーグのエンゼルスに入団した。この「寄り道」が最高峰の舞台で投打の二刀流を成功させた
▼近年の大リーグで、二刀流で好成績を収めた例はなかった。当初は高校卒業後に直接渡米することを希望していたが、そうしていたら投打のどちらかに絞るよう求められたかもしれない。日本球界に寄り道して実績を残したことで、米国でも二刀流が認められた
▼こちらの寄り道はどんな結果につながるのだろう。インドを訪れていた岸田文雄首相が帰国の途につく前にウクライナを電撃訪問した。5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を控え、G7首脳で1人だけ訪問していなかった。何とかして、かの地に立たねばという思いがあったはずだ
▼日ハムが大谷選手に入団を説得する際、綿密な資料を用意したことはよく知られている。スカウトを担当した大渕隆さんは十日町市の出身。日本球界を経て渡米した方が成功する確率が高まることを、各種のデータを交えて説いた
▼戦地であるウクライナ訪問は危険も伴う。首相の渡航に際しても緻密な計画が練られたはずだが、この原稿を書いている時点では訪問の詳細は不明な点も多い
▼大谷選手は日本球界での寄り道を糧に、大きな成功を手にした。首相のウクライナへの寄り道は、わが国に何をもたらすことになるのか。今後の動きも注視したい。