従来とひと味違う侍ジャパンが、チーム全員で世界一をつかみ取った。偉業をたたえ、選手や監督、スタッフらに拍手を送りたい。

 野球の国・地域別対抗戦、第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は米フロリダ州で決勝が行われ、日本が前回王者の米国を3-2で破り優勝した。日本の制覇は第1、2回大会以来14年ぶり3回目だ。

 今大会、世界一奪還を目指す日本は、栗山英樹監督が熱意を持って集めた大谷翔平選手やダルビッシュ有投手、日系のヌートバー選手といった米大リーガー勢をチームの根幹に置いた。

 そこに昨シーズン史上最年少三冠王となった村上宗隆選手や、完全試合を達成した佐々木朗希投手らを加え、国内外のスターが集まる史上最強チームと称された。

 その前評判通り1次リーグは全4試合を大差で勝ち、準々決勝からのトーナメントに進んだ。

 過去2大会は、米国ファンの多い敵地での重圧に苦しみ、準決勝で敗れた。しかし今大会、チームに悲壮感はなく、米国でも伸び伸びとプレーした。自然体で臨めたことが快挙を引き寄せた。

 意識を変えたのが2009年の優勝メンバーで最年長36歳のダルビッシュ投手のアドバイスだった。後輩選手と積極的に交流し、楽しむ意識を植え付けた。

 決勝は、準決勝のメキシコ戦に続き劇的な勝ち方だった。日本は7人の投手をつないだ。最終回は大谷選手がマウンドに上がり、米打線を3人で抑え二刀流の真骨頂を見せつけた。

 大谷選手は最優秀選手(MVP)に選ばれた。投打の中心になり気迫がこもったプレーでチームを引っ張った。準々決勝のイタリア戦ではチームの勝利のためにバント安打で好機をつくった。

 選手それぞれの持ち味が光る大会だった。

 今季から大リーグに挑戦する吉田正尚選手は、大会新記録の13打点を挙げ、ここ一番で期待に応えた。不調にあえいでいた村上選手は準決勝で逆転サヨナラの二塁打、決勝では同点アーチを放ち本領を発揮した。

 東日本大震災から12年になった11日には、岩手県陸前高田市出身の佐々木投手が先発し、被災地を元気づけた。

 今大会は英国やチェコ、ニカラグアが初出場して国際色が増した。約2週間の大会を通じ、各国で野球ファンが増えたことだろう。メキシコの監督は「母国の若者を引きつけた」と語った。

 1次リーグで日本と対戦したチェコは、大半の選手が普段は学生や別の仕事を持つアマチュアだ。中国に勝ち1勝を挙げ、大谷選手からは三振を奪った。

 野球の醍醐味や面白さを十分伝えた大会だった。

 大リーグの球団が選手の参加をこれまでより認め、多くのスター選手が出場したことも、大会の盛り上がりにつながった。

 日本の活躍は、野球に親しむ子どもたちや、多くの人に大きな夢と刺激を与えた。野球への関心が高まり、次世代の日本を代表する選手がどんどん育ってほしい。