ウクライナを訪問した日本と、ロシア入りした中国。時期が重なった両国首脳の動きは、ウクライナを巡る先進7カ国(G7)と中ロの対立構図を浮き彫りにした。

 ウクライナ支援で日本は、対立や分断の象徴ではなく、平和国家として国際社会の橋渡し役になるべきだ。停戦と和平を見据えた着実な取り組みが求められる。

 岸田文雄首相は、ロシアの侵攻を受けているウクライナの首都キーウ(キエフ)でゼレンスキー大統領と会談し、23日に帰国した。

 参院予算委員会で同日、訪問について説明し、「G7議長国を務める日本として、ウクライナ侵略への対応を主導する決意を示すことができた」と成果を語った。

 民間人が多数虐殺されたキーウ近郊のブチャも訪れた。

 首相が現地に赴き、悲劇を直視したことは、5月のG7首脳会議(広島サミット)でリーダーシップを発揮する上でも大きな意味があるだろう。

 ウクライナでは、エネルギー分野の無償支援や殺傷能力のない装備品の支援を表明し、サミットに向けた連携強化を打ち出した。

 国際刑事裁判所(ICC)がプーチン大統領に逮捕状を出したことを踏まえ、共同声明には戦争犯罪や残虐行為の責任追及という強い表現を盛り込んだ。核兵器の威嚇を非難し、対ロ制裁の維持強化が不可欠だと確認した。

 中国を念頭に、ロシアへの軍事支援を防ぐ重要性に触れたほか、東・南シナ海情勢への深刻な懸念を表明し、一方的な現状変更に強く反対した。

 軍事的圧力を強める中国へのけん制が目立つのは、ウクライナを「明日の東アジア」と捉える危機感の表れと見ていいだろう。

 その中国は、習近平国家主席が22日までの3日間、ロシアを公式訪問し、モスクワでプーチン大統領と会談した。

 習氏は訪問を「和平の旅」とし、侵攻の解決案などを話し合った。中立の立場だとして外交解決を求める案を説明し、プーチン氏は「建設的だ」と応じたという。

 しかし、ウクライナが停戦交渉の前提条件とするロシア軍の全面撤退やロシアが占領した地域の扱いについては言及していない。

 習氏は首脳外交でロシアとの連携を強めたが、ゼレンスキー氏とは対話をしていない。提案は中立とは言えず、疑問が残る。

 岸田首相はウクライナでの会見で「中国とロシアは侵略が行われた後も軍事的な協力を続けている」と両国をけん制した。

 習氏に対しては、昨年11月の日中首脳会談で責任ある行動を求めたとし、今回のウクライナ訪問を踏まえて「中国側としっかりと意思疎通したい」とも語った。

 首相はその言葉通りに、中国をはじめ各国と対話を重ね、平和的な解決策を探ってもらいたい。