新型コロナウイルス禍からの回復基調が見えてきた一方で、下落が続く地域も多く、二極化がさらに進んだ。全体の底上げには企業や人を呼び込む政策が必要だ。

 国土交通省は2023年1月1日時点の公示地価を発表した。県内の全用途平均は前年比マイナス0・7%と下落したが、下落幅は0・1ポイント縮小した。

 新潟市は全用途平均で前年比0・7%と2年連続でプラス圏となり、上昇幅も拡大した。他の市町村は下落に歯止めがかからず、地域差が顕著になった。

 県内は25市町村434の調査地点のうち99地点で上昇し、その8割以上を新潟市が占めた。新潟市は住宅地、商業地、工業地のいずれも上昇幅が拡大した。

 商業地では中央区のJR新潟駅周辺整備事業に伴う都市開発などの需要から、新潟駅周辺や万代地区での上昇が目立った。

 市は新潟駅から古町までを「にいがた2km(にきろ)」として企業誘致などへの支援策を打ち出しており、市の担当者は「効果が出てきた」と分析する。

 しかし、駅から離れた古町エリアは低迷が続き、全体に波及しているとは言えない。マンションなど住居需要は見込まれるものの、28年度が完成目標の新潟三越跡地の再開発事業がもたらす地価への影響はまだ見えていない。

 駅周辺の堅調な需要も長期的に続くかは不透明だとする専門家もいる。しっかり目配りしていく必要がある。

 県全体では、新潟市以外の全用途平均は昨年横ばいだった聖籠町を含む24市町村で下落した。

 過疎化を背景に下落幅が拡大した市町村が多く、人口減や少子高齢化といった構造的な要因による影響が大きいとみられる。

 県内全域に回復基調が及ぶように知恵を絞りたい。

 スノーリゾート地でのインバウンド需要は、まだ本格的な回復段階ではないが、観光客は持ち直しつつある。JR越後湯沢駅周辺や妙高市赤倉地域の商業地点では下落幅は縮小し、今後の客足回復への期待感を反映した。

 全国に目を向けると、全用途の平均は前年比1・6%伸びて2年続けて上がり、上昇幅は1・0ポイント拡大した。リーマン・ショック前の08年(1・7%)以来の大きさで、経済の復調を印象付けた。

 地方では駅周辺など交通の利便性が高い地区を中心に上昇したことが特徴だ。

 ただ、上がった地点も含め全調査地点の約半数は、価格がウイルス禍前の水準に戻っておらず、回復途上にある。

 客足が伸びず地場産業が振るわずに地価が下落し、回復への足がかりを見いだせない地域もある。

 国や自治体は、過疎地などでも暮らしやすいよう利便性が向上する取り組みを進めてもらいたい。