特効薬はないと言われる少子化対策に、大盤振る舞いで政策を示した。全て実行できれば効果は表れるかもしれないが、それには政府が責任を持って裏付けとなる財源を示す必要がある。

 政府は少子化対策の強化を目指し、たたき台となる試案を公表した。岸田文雄首相が掲げる「次元の異なる少子化対策」を具体化する政策集に当たるものだ。

 試案は、若い世代が希望通りに結婚し、子どもを持ち、ストレスを感じず子育てができる社会を基本理念に掲げた。

 子育てを家庭だけの責任にせず、企業や男性、高齢者、独身者など社会全体で支えるという考え方に立ったことは評価できる。

 今後3年間を集中取り組み期間とし、少子化傾向の反転に向けた対策を加速する。

 子どもを産む若年人口が急減する2030年代は目前に迫っている。政府は急いで対策を実行に移さなくてはならない。

 試案には、児童手当の所得制限撤廃をはじめとする経済的支援の強化や、男性の育児休業促進策など幅広いメニューが並んだ。

 出産費用の公的保険適用や、給食費の無償化、奨学金拡充といった自民党が提言した大型案件も盛り込まれた。

 統一地方選を前に、政策議論が活発化し、大風呂敷を広げたこともあるだろう。

 問題なのは、裏付けとなる財源論が素通りされたことだ。政策の絞り込みも不十分だった。

 予算規模は児童手当の拡充だけで兆円単位と見込まれ、全てを実行すればさらに膨らむ。

 出産費用は現在、正常分娩(ぶんべん)は自由診療のため各医療機関が価格を決めており、地域差が大きい。保険適用となれば医師会などとの調整は難航が必至だ。

 給食無償化は、給食がなかったり、自治体が独自助成したりするケースがあり、試案では「課題の整理」にとどまっている。

 財源確保を巡り、政府内では社会保険料に一定額を上乗せして捻出する案が浮上し、幅広い年齢層が加入する医療保険を軸にした調整が進んでいる。

 だが医療保険は本来、少子化対策が目的ではなく、子育て当事者以外からの反発も予想される。

 政府は6月の経済財政運営の指針「骨太方針」までに子ども予算倍増の大枠を示す方針で、実現に向けたかじ取り役は、1日に発足した「こども家庭庁」が担う。

 同庁は深刻化する児童虐待や貧困といった課題もあり、難題が待ち受ける中での船出となった。

 試案の政策が言いっ放しになれば、子育て世代の失望を招きかねず、出生数の反転は望めない。

 政府は、財源確保のための負担増という痛みを伴う議論を後回しにしてはならない。早急に国民に示し、説明するべきだ。