ロシアにとっては、軍事的な包囲網の拡大阻止を狙ったウクライナ侵攻が裏目に出た。対抗措置に言及して威嚇しても、国際社会の理解は得られない。

 加盟各国は地域の平和と安定のために結束し、外交努力を不断に続けてもらいたい。

 北欧フィンランドが4日、北大西洋条約機構(NATO)に正式加盟した。第2次大戦後の伝統的な中立外交を転換した。

 加盟は31カ国目で、ウクライナ侵攻後に申請してから1年足らずで実現した。NATO側が異例の早さで陣営の結束を誇示した。

 NATOのストルテンベルグ事務総長はフィンランドのニーニスト大統領と記者会見し「北欧の安全保障やNATO全体にとっても良いことだ」と指摘した。

 フィンランドとロシアの国境は約1300キロに及ぶ。加盟によりNATO圏とロシアの国境は一気に2倍まで伸びた。

 徴兵制を敷くフィンランドで、予備役は人口の16%に当たる約90万人で欧州最大規模だという。寒冷地での訓練経験も豊富で、NATOにもメリットが大きい。

 ロシアには大きな脅威となるに違いない。国防政策の見直しを迫られるのは必至で、侵攻にも影響する可能性がある。

 加盟について、ロシアのリャプコフ外務次官は「ロシアが対抗措置を取らないと考えるのは大間違いだ」とけん制した。

 3月にプーチン大統領が表明したベラルーシへの戦術核兵器配備も「リスクの高まりに対する当然の反応だ」と正当化した。

 侵攻にはNATOの東方拡大を阻止する狙いがあった。しかし、フィンランドは侵攻や核の威嚇をNATO加盟の主な理由とした。ロシアの行為が包囲網拡大を招いたことは皮肉な結果だ。

 ロシアが核兵器に言及するのは通常兵器ではNATOに対抗できない現実の裏返しだと言える。人類に破滅をもたらす核による威嚇は断じて認められない。

 一方、欧米がウクライナへの軍事支援を増強すればロシアの態度はさらに硬化する。過度に追い込まない難しい対応が求められる。

 第2次大戦中フィンランドはソ連に2回も侵攻された。約10万人が犠牲になり、領土の1割を奪われた。戦後はソ連やロシアを刺激しないよう中立を維持してきた。

 「過去の再現」におびえる国民の中で加盟への支持は強い。ただNATOの「集団防衛」に加われば、加盟他国の戦争に巻き込まれることへの恐れもあるようだ。

 今後は、同時に加盟申請した隣国スウェーデンの承認が焦点となる。トルコとハンガリーが承認に後ろ向きだが、NATOは「加盟に全力を尽くす」とする。

 国際秩序の維持、強化に向けて各国は武力行使に頼らない道筋も探り続けてもらいたい。