高度な安全性を求められる原発で、ずさん極まりない調査を繰り返していることに強い憤りを覚える。再稼働不許可の可能性を示唆されたことは当然で、その事態を電力会社が自ら招くようでは、到底信頼できない。

 原子力規制委員会は5日、日本原子力発電が、敦賀原発2号機(福井県)の再稼働へ向けた審査資料の誤記などを繰り返し、改善しないため、審査を再び中断する異例の方針を決めた。

 原電に対し審査申請書の一部を補正し、8月末までに再提出するよう行政指導する。

 敦賀原発2号機を巡っては、トラブルで運転停止中の2013年、規制委の調査団が原子炉直下の断層を「活断層」だと指摘した。

 新規制基準では、重要施設の直下に活断層があれば再稼働できない。原電は15年に再稼働の審査を申請し、反論を続けてきた。

 しかし、19年に断層調査に関する資料で千カ所以上の記載不備が見つかり、20年には地質データの無断書き換えが判明したため審査は約2年間中断した。

 再開後の22年12月と今年3月にも地層の観察場所を間違えるミスが報告され、今回再中断された。

 お粗末としか言いようがない。規制委の山中伸介委員長は「書類をチェックする体制ができていない」と原電を批判した。

 委員の1人は「書類のクオリティー(質)が低いことを理由に審査を打ち切ることはできないか」と事務局に確認を求めた。審査の入り口にも立っていないレベルということだろう。

 山中委員長は、原電に申請書を補正させた上で、審査を継続するか最終判断するとし、改善が見られなければ、再稼働を不許可にする可能性も示唆した。

 原電は厳しい指摘を重く受け止めるべきだ。

 原発専業の電力会社である原電が所有している原発は、敦賀2号機と東海第2原発(茨城県)だけで、どちらも再稼働のめどは立っていない。

 東北電力など電力各社は原電と受電契約を結び、各社は受け取る電気がゼロでも維持費に相当する基本料金を支払っており、電力業界が原電を支えている。

 電力会社関係者が「原発を動かす見通しが立たないまま多額の金を出し続けているは状態は良くない」と言うように、原電が業界に負担をかけている実態がある。

 本県では、東京電力が柏崎刈羽原発の再稼働を目指しているが、1月に運転開始30年を前にした3号機の審査書類に、既に審査を終えた2号機の書類の内容を流用したことが明らかになった。

 原電と東電の対応は形を整えるだけで内容を重視せず、審査を甘く見ているように映る。規制委はさらに厳しい目で調べ、厳正に対処してもらいたい。